もし同じ出力300MWの容量が設置されるとしたら、メガソーラー(大規模太陽光発電所)と何万件もの家の分散型太陽光発電システム(Distributed Generations:DG)、どちらの方が社会に対してメリットが多いのだろうか?

 そんな質問に答えるべく、米The Brattle Groupコンサルティング会社の経済学者が研究・分析を行い、今年7月にその成果「Comparing Benefits and Generation Costs of PV Utility- and Residential-Scale Solar(発電所用と住宅用太陽光発電の社会的便益とコストの分析)」を発表した。今までエネルギーコスト、環境貢献に関する分析は、風力、水力など異なる発電技術の間で比べたものが多かったが、今回は太陽光発電という同じテクノロジーの異なる設置形態の間で比較・分析した。

 分析の前提とした時期と場所は、2019年、コロラド州最大の電力会社であるXcel Energy社のサービス管轄内。そこに以下の2システムを設置したと仮定した。(1)計300MWの発電事業用のメガソーラーと、(2)同じく計300MW(各戸5kWを6万軒設置)の分散型住宅用太陽光発電システムで、これらを比べた。

 The Brattle Group社は太陽光発電の導入により電力需要家に課されるコスト(電気料金負担)を「基準ケース」と5つのシナリオをもとに分析した。この結果、発電事業用のコストは6.6~11.7米セント/kWh、そして住宅用オーナー所有は12.3~19.3米セント/kWh、住宅用リースはで14.0~23.7米セント/kWhとなった(図1)。

図1●太陽光発電の導入により電力需要家に課されるコスト。複数のシナリオは、連邦政府の再生可能エネルギー投資税額控除、インフレーション、太陽光発電の設置コストなど条件の違いによる(出所:The Brattle Group「Comparative Generation Costs of Utility-Scale and Residential-Scale PV in Xcel Energy Colorado’s Service Area」)
[画像のクリックで拡大表示]

 同社の説明によると、このコストの違いは、(1)大規模のほうがkW当たりの設置コストが低い、そして、(2)同じ300MWという設置容量でも発電事業用は、ロケーション、パネルの配置、システム設置(追尾式など)が最適化され、効率も高くなるので、総発電量がより多くなる、ということだった。