前回、第5世代移動通信方式(IMT-2020)の周波数割り当てや標準化は、ITU-R(International Telecommunication Union Radiocommunication Sector)の方針に従うという話をしました。また、このITU-Rの「Working Party 5D(WP5D)」というグループから2015年6月に、5Gの標準化に向けてキーとなるIMTビジョン勧告「IMT Vision – “Framework and overall objectives of the future development of IMT for 2020 and beyond”」と、これまで移動通信には使われなかった6GHzの利用に関する報告書が承認され、発行されたという話をしました。今回は、この勧告と報告書について詳しくお話しします。

 まず、IMTビジョン勧告について、以下にその概要を示します。

5G(IMT-2020)の利用シナリオ

 5Gでは、4Gからのさらなる発展を目指し、これまでにないサービス、アプリケーションを取り込むことを見込んで、3つ代表的な利用シナリオを想定しています。

●モバイルブロードバンドの高度化

5Gにおいては、4G以上のユーザー体験を提供すべく、ユーザー当たりの最大データレートの向上(高詳細動画、3Dデータなど大容量コンテンツの高速ダウンロード)、密集地におけるトラフィック容量の向上(球場、大規模イベント、公共交通機関など大勢の人が集まったところでの高速アクセス)、その他さまざまな新しいアプリケーションへの対応を目指しています。

●大量マシン型通信

センサーネットワークなどIoT(モノのインターネット)と呼ばれる、大量の機器のモバイルネットワークへの接続をめざしています。

●高信頼・低遅延通信

自動車、機械、工場における自動運転や遠隔コントロール、遠隔医療、公衆安全などの用途をめざしています。

図1 出典:IMT Vision:Usage Scenarios of IMT for 2020 and beyond
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