前回、3GPPにおける5Gの標準化動向をお伝えしました。今回は第5世代移動通信システム(5G)の周波数割り当てに関して鍵を握る「ITU-R」の動向を簡単に解説したいと思います。

 ITU(International Telecommunication Union)は国連の専門機関で、その中でも無線周波数や衛星軌道の利用などを調整している部門がITU-R(ITU Radiocommunication Sector)と呼ばれる組織になります。電波は国境に関係なく伝搬していきますので、各国・各地域が勝手に周波数を利用していては、無線通信、放送、レーダー、GPS、地学天文学などのさまざまな用途で干渉が発生し、利用に支障をきたすことになります。ITU-Rはこうした状況を回避するため、国際的な取り決めをまとめています。さらに、無線システムに関わる研究開発や標準化を行い、各種の勧告や報告書を作成しています。

 ITU-Rでは、加盟国全体で、今後の無線通信についての規制や割り当ての方向性について話し合う、世界無線通信会議(World Radiocommunication Conference、WRC)を数年に1度開催しています。今年(2015年)は、「WRC-15」が開かれる年となっており、11月にスイス・ジュネーブに各国の代表者が集まります。将来、移動通信システムに割り当てるべき周波数も議題の1つとして議論されることになっています。

 ITU-Rでは移動通信システムのことをIMT(International Mobile Telecommunication)と呼んでいますが、これに特化して検討を進めているITU-R内のグループが「Working Party 5D(WP5D)」というグループになります。このWP5Dが2015年6月に開催した会合でWRC-15に向け、今後の5Gの標準化に向けてキーとなるIMTビジョン勧告と、これまで移動通信には使われなかった6GHzの利用に関する報告書が完成し、現在正式な発行手続きを待っているところです。