ガンプラ(「機動戦士ガンダム」のプラモデル)が入荷するらしいぞ──。そんな噂が駆け巡ると玩具店や文房具店の前に小中学生の長い行列ができた時代があった。1980年代初頭のことだ。「押さないで」「1人1個だよ」と店主にいさめられながら、なけなしのお小遣いでガンプラを手に入れる。こうした思い出を持つ40~50代の男性は多いことだろう。

 「RX-78-2 ガンダム」「シャア専用ザク」「ゲルググ」「ズゴック」…。テレビアニメと同じイラストが描かれた箱をわくわくしながら開けて、プラスチック製の部品を取り出し、むさぼるように説明書を読みながら、組み立てる。

 そんなブームはすっかり過去の話かと思いきや、ガンプラ人気は今も健在だ。2015年3月期のバンダイのガンプラなどガンダム関連の売上高は約800億円。大ブームになった「妖怪ウォッチ」関連の売上高を上回っている。ガンプラの人気は、国内に加えて、海外でも高まっている。

ガンプラ開発設計チームのシニアマイスター、大須賀敏亨氏(写真:廣瀬貴礼)
ガンプラ開発設計チームのシニアマイスター、大須賀敏亨氏(写真:廣瀬貴礼)
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 ガンプラは今も持続的な進化を遂げることで、子供から大人まで幅広い層を魅了している。とりわけものづくりの観点から、どのような部分で進化を遂げているのか。ガンプラの企画、開発、設計、生産までを一貫して手がける静岡県静岡市のバンダイホビーセンターを訪れた。

 「1枚のランナーに複数の色を塗り分けた部品を成形する技術、接着剤なしで組み立てられる構造、設計の進化によるよりアニメに登場する機体の精緻な再現性、さらに初心者向けから上級者向けまで品ぞろえを拡充して、ガンプラは進化を続けている」。ガンプラの設計を30年近く手掛けてきたバンダイ・ホビー事業部、開発設計チームのシニアマイスター、大須賀敏亨氏はこう説明する。