受講を終えて

 恥ずかしい話ですが、COJTを受講したての頃は、僕は「レジスター」が何であるかすら分かっていないような人間でした。情報系と言っても、マイコンを触ったこともなく、ハンダ付けをしたこともなく、ただ高いレイヤーのソフトウエアしか扱ってこなかった自分からすると、コンピューターもシンセサイザーも、結局はただのブラックボックスでしかありませんでした。モデルとして理解していることと、実際に中身について理解しているということは、全く違います。そんな状態でも、文法に従って書けば取りあえず動くプログラムを書くことはできます。素晴らしい時代です。

 しかし、アーキテクチャの性能の限界に近い処理を実現したい場合は、そのブラックボックスの中身自体を直感的に理解している必要があります。COJTの「ハードウェアコース」を通して回路設計に触れることで、ハードウエアがミクロ的にどう動いているかということを、より具体的にイメージすることができるようになりました。

 COJTの1年間は、実験のたびに新しい知識や概念を得ることができ、非常に実りのある時間でした。筑波大学情報学群の諸君は、得意分野にかかわらず、ぜひ受講すべきカリキュラムです。

 最後に、頓珍漢な質問を繰り返す僕に辛抱強く説明をしてくださった、講師の方、TAの方、COJTのみなさま、ありがとうございました。この場を借りて御礼申し上げます。

 なお、今回のシンセサイザー開発での経験を発展/応用させたテーマが、情報処理推進機構(IPA)の「未踏」に採択されました(IPA 2015年度未踏事業公募結果)。

 結果が出るのは1年後で、これから開発に入っていく段階ですが、今度はより多くの人に実用してもらえるものを目指して開発を進めていきます。ぜひご期待ください。