「皆さんから、『エネルギー業界がこんな激動の時代になるなんて、まったく思ってなかったでしょう』と聞かれます。そうだと言いたいところなんですが、実は、そうでもなかったというささやかなエビデンスがあります」

 日経エネルギーNextが7月15日に開催したイベント「電力ビジネスSummit 2015」の基調講演。登壇したJERA(ジェラ)垣見祐二社長は、会場を埋め尽くした600人超の聴衆を前に、こう語り始めました。JERAと言えば、東京電力と中部電力の燃料調達・発電部門を統合し、4月に発足したばかりの新会社。電力システム改革の申し子とも言うべき存在です。

 垣見社長が披露したエピソードは、約30年前の1986年に業界紙の懸賞論文コンクール向けに執筆し、最優秀賞に選定された論文にまつわるもの。論文のテーマは「エネルギーの未来、電気事業の国際化」。2010年の電気事業を占う内容で、国内では様々な事業者が電気事業に参入し、電気事業者は成長を求めて海外へ進出するという見通しをまとめたものでした。講演中に垣見社長は論文の中の一節を朗読。その内容は、なかなか刺激的なものでした。

 「もしも、変化に対応することができなかったならば、我々は電気事業のたそがれという時間の中で、憂鬱な日々を送ることになろう。2010年、秋の日のある夕方、電力市場に参入したガス・石油あるいは家電会社との競争に疲れた体を休めるために、テレビを付けて、ソファーに横になる。そこで、プラスチックバッテリー付き太陽電池パネルを売る会社の、次のような攻撃的なコマーシャルコピーを目にするかもしれない。『電力会社のなくなる日。でも電気は灯っています』」

 垣見社長は読み上げた後、こう続けました。