「これからの照明制御システムは、オープンな制御プロトコルと相互運用性の重要性が増す。『デバイス+コントローラー』の組み合わせで色変化をもっと自由自在に扱えるようになる。これはLED照明だからこそできた照明制御である」。こう語るのは、レイオスの北田富一社長だ。

 レイオスは、「ヒューマン・セントリック・ライティング(HCL:Human Centric Lighting)」の取り組みに力を入れる企業の1社だ。HCLは欧州や米国で広がる照明の概念の一つで、照明の明るさや色などの調整によって照明下で過ごす人の集中力を高めたり、生活リズムを改善したりすることなどを目指している。

レイオスの北田富一社長と、糸井一樹氏(写真:グラナージュ)
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 「HCL分野では、職場や学校での集中力や、人間の自然治癒力を向上させる光についての研究が進んでいる」(レイオスの北田社長)という。オフィスやホテル、商業施設、病院、学校などで照明を制御することで能動的に「人にやさしい」環境を構築する。これが、HCLの取り組みの中核だ。

 14年前にフィンランドのHelvar社の日本代理店としてレイオスを創業した北田社長が、HCLの取り組みで中心的な役割を果たすと見る技術がある。それは、通信ネットワークを用いた照明制御システム関連の標準規格「DALI(Digital Addressable Lighting Interface)」だ。IEC(国際電気標準会議)が1990年に策定した蛍光灯電子安定器の調光形安定器の制御インタフェース規格に始まり、現在では国際標準「IEC 62386」として定められた規格である。2014年11月には、第2版(IEC 62386 DALI Ed.2)として刷新された。

ネットワーク照明、相互運用性がカギに

 北田社長はDALIの特徴を「『信頼性』『汎用性』『安定性』『拡張性』を兼ね備えた制御システムだ」と説明する。実際、ここにきて照明制御システムの重要性は増している。LED照明と制御システムの組み合わせによって、例えば、時間経過と共に照明の色や色温度を多様に変化させることが容易になったことが大きい。

 DALIは、こうした照明の制御で相互運用性の高い環境を構築しやすいと期待を集めている。いわば「オープン性の高い照明制御システム」の実現だ。相互運用性が高まれば、異なるメーカーの製品間を同じプロトコルで制御できるようになり、多くの企業が参入したLED照明の業界においてメーカーに縛られない自由な設計で照明環境を構築しやすくなる。

 ただ、相互運用性の実現は簡単ではない。何十万という色や色温度を表現できるLED照明は、メーカーによって特性が微妙に異なる可能性があるからだ。オープンな制御プロトコルで最適な色を指定しても、実際の環境下ではほんの数%の違いで色が異なることがある。視覚的には全く同じ色に見えても、微妙な違いによって快適ではない色になってしまうかもしれないのだ。

 特にHCLの取り組みによる「人間中心の照明環境」を実現する際には、照明制御システムを利用することで、どの企業の製品を使っても均一に快適な空間を表現できるようにすることが今後重要になってくる。

 レイオスによれば、日本の照明全体に占める照明制御システムの採用比率は、約40%と推定されている。このうち8~9割が独自の制御方式を用いている。日本では特に独自制御方式を用いている割合が高く、ほとんどが独自プロトコルを採用しているという。