3Dプリンターは試作品の製造にとどまらず、製造業や医療・ヘルスケア産業における実部品製造など、様々な用途への応用が広がっています。近年、種々のメーカーが材料押出方式の付加製造装置を低価格で製品化し、個人への広範な普及が想定されるようになりました。こうしたことから、3Dプリンターへの注目度は高まり続けています。特許庁は「平成25年度特許出願技術動向調査」において、3Dプリンターに関する特許出願動向や研究開発動向を調査し、その実態を明らかにしました(特許庁による調査レポートの概要(PDF形式)はこちら)。同調査の主要部分を本稿で紹介します。

 3Dプリンター(付加製造技術注1))は、材料の付着を繰り返すことにより3次元形状の物体を作成する付加製造装置を指します。付加製造技術は、造形に用いる材料に関する技術、積層を行うための付加製造方式に関する技術、さらに装置の機構や制御方式を含むシステム化技術など、様々な要素技術が複合的に関係しているため、これらの技術を調査対象としました(図1)。

注1)日本では3Dプリンターという用語が広く普及していますが、国際的にはAdditive Manufacturing(付加製造)との用語が普及しています。そのことから本調査では「付加製造技術」と表記しました。
図1 技術俯瞰図
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3Dプリンターの始まり、日本人が発明、その後米国と係争に

 調査結果を示す前に、付加製造技術がいつごろ登場したのかについて紹介します。

 付加製造技術は、1980年代に名古屋市工業研究所の職員であった小玉秀男氏が半導体加工技術と新聞の版下作成技術から着想を得て光造形法注2)のコンセプトを産みだしたところから始まります。小玉氏は1980年4月に個人で光造形法の特許を出願しており、当該出願は1981年11月に出願公開(特開昭56-144478)となっています。

注2)光造形法とは、CADデータから作成された断面データにもとづき、レーザー光を液状の光硬化性樹脂の表面に照射して硬化させることで造形を行う方式です。

 小玉氏の発明から数年後、米国でChuck Hull(チャック・ハル)氏が独自に付加製造装置を発明し、その後、製品化へ向けて3Dシステムズを設立しました。3Dシステムズは付加製造装置の実用化の勘所となる光硬化性樹脂の表面張力に関する数値限定特許を出願し、光造形法の原理を出願した小玉氏らと無効審判を巡って係争を繰り広げましたが、最終的にクロスライセンスにより日本メーカーと和解しました。