半導体業界で業界を震撼させる大型M&Aが次々とまとまっている。テクノ大喜利では、こうした業界の形を変えるM&Aによって、半導体業界内の各社が新たに得た機会と抱えたリスクを考え、半導体業界のこれから姿を読む視点の発掘を目指した。今回の回答者は、某ICT関連企業のいち半導体部品ユーザー氏である。

いち半導体部品ユーザー
某ICT関連企業
ICT関連企業で装置開発に必要な半導体部品技術を担当。装置開発側の立場だが部品メーカーと装置開発の中間の立場で両方の視点で半導体部品技術を見ている。

【質問1】Intel社によるAltera社の買収、Avago社によるBroadcom社の買収。それぞれが新たに得た機会と新たに抱えた危機は何だと思われますか?
【回答】得たのは事業の維持あるいは拡大の機会、抱えたのは不明確な戦略リスク

【質問2】大型M&Aが立て続けに起きた結果、現在動いていない半導体メジャーが新たに得た機会と新たに抱えた危機は何だと思われますか?
【回答】ブレない技術開発を評価する声も既存市場から出てくるのではないか

【質問3】世界の大きな業界再編の動きによって、日本の半導体メーカーが得た新たな機会と、新たに抱えた危機は何だと思われますか?
【回答】大型スーパーマーケットに対抗できる小規模小売店は存在するはずだ

【質問1の回答】得たのは事業の維持あるいは拡大の機会、抱えたのは不明確な戦略リスク

 M&Aに踏み切る動機には、自社で技術開発するよりも、他社の技術を買ってしまった方が早く、かつ安価で製品化できるといったものが一般的だ。その他にも、M&Aを仕掛けた企業には、さまざまな理由があると思う。

 しかしここではあえて目的を大きく2つに括ってしまって考える。一つは、変化する市場の中で現在のシェアやポジションを維持するため。もう一つは、新たな事業へと拡大するためである。ただし、新たな事業は、現在参入できていない既存市場と、これまで存在していなかった新規市場の2つがあるため、実際には3つの括りで考えるのが妥当だろう。

 一方、買収後のビジネスモデルからも分類できる。一つめは買収された側の企業のビジネスモデル、体制、社風などを買収した側に合わせる場合。二つめは、合わせず従来のまま事業を行う場合。三つめは、買収した側とされた側の両社が新たなビジネスモデルを立ち上げる場合である。

 こうしたM&Aの目的や買収後のビジネスモデルなどによって、新たに得た機会と新たに抱えた危機は大きく変わってくると思われる。

不明確な戦略は破滅の元


 Intel社によるAltera社の買収は、目的は従来市場の維持であり、ビジネスモデルはIntel社流に統一するのではないかと考える。この場合、多分目的を達成する可能性は高いが、成功するかどうかはAltera社がIntel社になれるかどうかに掛かっているのではないか。

 一方、Avago社によるBroadcom社の買収の場合、両社がこれまで参入できていない新規市場の獲得が目的である。ビジネスモデルも無理に統合することはないと思われる。リスクは高いかも知れないが、成功した場合に得られる果実は大きいはずだ。ただし、成功に向けて明確な戦略が必須であり、不明確な点を抱えていれば、そこから危機的な状況に陥る可能性があると考える。