「スマートフォンてなんだ。ドコモの『iモード』のほうがよっぽどスマートじゃないか」――。

 2000年代の初めころ。日経エレクトロニクスの編集会議で、こう先輩記者に指摘されたのを覚えています。欧米のモバイル系展示会に行き、“スマートフォン”というキーワードが話題になっていると報告したところ、あっさり切り返されました。

 当時はまだ米Apple社の「iPhone」も出ていなくて、米Google社の「Android」もありませんでした。様々な企業が「スマートフォン」という言葉を標榜し、展示していたけれど、クリアなイメージがまだできていない状況でした。携帯電話機におけるソフトウエアやサービスではNTTドコモの「iモード」が先進的であり、「iモードのほうがよっぽど進んでいる」というのが当時の空気だった気がします。

 それが、2015年の現在。状況はすっかり変わりました。“スマホ”というキーワードはだれでも知っていて、共通のイメージがあります。タッチ操作でアプリを切り替えて楽しめる薄型の携帯機器で、あたかもスマホを持ってないと遅れてる…そんなイメージに様変わりしました。

 漠然としていた“スマホ”のイメージをこれほどクリアにしたのは、2007年の「iPhone」の登場ではないでしょうか。iPhoneが、スマホのイメージをハッキリさせ、だれでも連想可能なものに昇華させました。いわば『決定版の登場』だったのではないかと。