シリコンバレーの強みとして良く語られるのが、エンジニアや起業家、投資家からなる「エコシステム(生態系)」の存在だ。ビジネスのアイデアを持つ起業家に対して、ベンチャーキャピタル(VC)などの投資家が資金を提供し、エンジニアがビジネスの急成長を支える。

 シリコンバレーのエコシステムは、IT分野だけでなく、ロボット産業にも広がっている。その中心にあると目されているのが、NPO団体の「Silicon Valley Robotics(SVR)」だ。SVRはスタンフォード大学と関連の深い研究機関、米SRI Internationalなどの呼びかけで2010年に設立された「ロボティクスのイノベーションを促進するための団体」(SVRのAndra Keayマネージングディレクター)で、ロボットメーカーやエンジニアなどが会員となっている。

 日本でもSVRに対する注目度が高まっている。三井住友銀行は2015年5月25日、SVRとの提携を発表。ロボット関連分野に関心がある日本企業と米国企業をマッチングする取り組みを始めた。SVRとはどのような団体か。SVRが主催するイベントや、SVRと提携した三井住友銀行への取材などから、SVRの実態を探った。

シリコンバレーと韓国ロボット業界をマッチング

 記者が参加したのは、米国の大手EMS(電子機器の受託生産サービス)事業者、米Jabil Circuit(ジェイビルサーキット)のシリコンバレー拠点で2015年6月25日(米国時間)にSVRが開催した「KOREA ROBOT FORUM」と題するイベントだ(写真)。韓国とシリコンバレーのロボット産業関係者が集まり、今後のロボット産業の進むべき方向性や、韓国のロボット産業の現状などについて話し合った。

写真●Silicon Valley Roboticsが主催した「KOREA ROBOT FORUM」
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 イベントは大きく3部構成だった。午前中の基調講演ではロボット産業に詳しい有識者がその歴史や現在の動向を解説。午後には、産業用ロボットの将来に関するパネルディスカッションと、消費者向けロボットやサービスロボットに関するパネルディスカッションが開かれた。その合間に、韓国サムスン電子などが拠点を置く工業都市、韓国・大邱のロボット企業や部品メーカーの経営者が、自社の取り組みなどをアピールする場が設けられた。

 内容を少し見てみよう。