子ども達にどう伝えるか

 本題の外部委員を交えたダイアログでも、議論が盛り上がったのはやはりリスクコミュニケーションについてでした。例えば、子どもたちを対象にした消費者教育をどのように展開し、認知度を高めていくかについて活発な意見交換がなされていました(図5)。製品を安全に使ってもらうには、子どもたちに向けた発信が重要ではないかとの視点からです。

図5 製品安全ダイアログの様子
有識者とLIXILの担当者との議論が重ねられた
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 実はLIXILでは、子どもたちに家の中に潜む事故の危険性を知ってもらうための「安全教育授業プログラム」なる小冊子を作り、教育関係者への無償提供を始めました(ニュースリリース)。しかし、これを実際に教育現場で活用してもらうのは簡単ではありません。ダイアログの中では、LIXILという一企業からの提供ではなく、色が付かないように第三者機関に同様の冊子を作ってもらってはどうかとか、学校の先生の意見が入っているといいのではないかといった議論が交わされていました。

 事故の取材をしていると、「日本には製品安全文化が根付いていない」というが話題がしばしば出ます。提供されている製品が無条件に安全と思い込んでリスクに目を向けないということです。メーカーが安全な製品を設計・製造するのは当然のことです。しかし、リスクゼロはあり得ません。ユーザーもまた賢くなり、リスクを認識した上で使わなければ事故はなくなりません。一方で、消費者の品質や事故に対する姿勢はますます厳しさを増しています。LIXILのような大企業に限らず、今後は中堅や中小でもCSR(企業の社会的責任)にリスクコミュニケーションの視点が欠かせないものとなるのではないでしょうか。