過去の事故に学ぶ

 取材当日は、本題の議論(ダイアログ)の内容もさることながら、その前に案内していただいた同社資料館が興味深いものでした。この資料館は、同社の事業概要やこれまでの製品開発の歴史を製品やサンプルとともに解説した展示施設です(図1)。まあ、それだけならよくある施設なのですが、製品事故の原因・様子などを展示した「Safe Lifestyle Gallery」を備えている点が普通の企業資料館とは少し違います。

図1 資料館の展示物
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 Safe Lifestyle Galleryのコーナーに入ってまず目を引くのが、黒焦げの洗浄機能付きトイレ(図2、3)。かつて、旧INAXのトイレで発火・発煙するという事故がありました。断線して便座の保温機能が働かない状態で長期使用したためです。展示品はそれを再現したもの。焼損した洗浄機能付きトイレはなかなか生々しくて、事故防止に向けて意識を高めるという点で説得力のある展示でした。

図2 洗浄機能付きトイレの焼損事故を再現したもの。
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図3 展示を見学
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 この他、利用者が出っ張ったつまみに接触して知らずしらずのうちに電源が入る可能性のある電気こんろや(図4)、挟まれる可能性のある窓やドアなど、住設設備の事故に関するさまざまな製品が解説とともに展示されています(もちろんいずれも対策を施した製品と一緒に)。これらの展示は、予約すれば一般の方も見学できます。同社の製品安全に対する取り組みをアピールするととともに、製品の正しい使い方や定期点検・修理の重要性について消費者に知らせるのが狙いです。製品のリスクや安全な使い方に対する理解を深めてもらうという、いわゆる「リスクコミュニケーション」の側面を担っているのです。

図4 電気コンロの事例
つまみが出っ張っていると、体が触れて知らないうちにスイッチが入る場合がある。現在の製品は、カバーで覆ったり本体に埋め込んだ形になったりしている
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 開発設計・品質担当者が過去の事故事例を学ぶための「事故展示室」の見学も興味深いものでした(ここは、社内向けの施設のため公開していません)。不具合のあった製品の現物や、原因分析のパネル、事故の再現ビデオ、製品安全の研修ビデオなどを見ることができます。製品事故防止にかかわる小集団活動や研修などもこの展示室で行っているようです。撮影禁止だったので写真はありませんが、事故防止に向けた同社の力の入れようの一端がうかがえました。