群馬大学大学院理工学府電子情報部門 客員教授、モーデック 最高顧問の青木均氏
群馬大学大学院理工学府電子情報部門 客員教授、モーデック 最高顧問の青木均氏
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 アナログ回路設計において頻繁に使われるEDAツール。しかし、設計の際に問題が生じることが散見されるという。設計した回路のシミュレーション結果が試作回路の特性と大きくズレてしまったり、シミュレーションスピードが遅くなったりしてしまうのだ。最も大きな原因が、シミュレーションに用いる能動素子のデバイスモデル(コンパクトモデル)の性能にあるという。従って、コンパクトモデルについての知識を深めることで回路シミュレーション結果を正しく評価でき、簡単な解析や改善に向けたアイデアが得られる。
 「技術者塾」のアナログ技術連続講座において「高精度自動集積回路設計のためのシリコントランジスタモデリング」(2015年8月27日、28日開催、詳細はこちら)の講座を持つ、青木均氏(群馬大学大学院理工学府電子情報部門 客員教授、モーデック 最高顧問)に、コンパクトモデルの要点を押さえる意義を聞いた。(聞き手は日経BP社 電子・機械局 教育事業部)

――回路シミュレーション結果と試作回路のずれ、シミュレーションスピードの低下について基礎事項を理解する重要性をご説明ください。

青木氏 集積回路設計以前に、比較的小さなアナログ回路モジュール設計においても、EDAツールを用いた回路設計が行われています。これは経験の少ない回路設計技術者、学生においても常識となっています。EDAツール上の回路シミュレーターにより動作検証を行って、試作をするわけですが、動作しない、あるいは特性が仕様範囲外であるケースは少なくないと思います。

 それではどのようにして、その原因を見つけるか、設計をどのように修正するかを考える必要があります。熟練技術者や高い知識を持つ研究者であれば、経験などから“あたりをつける”ことができると思います。そうでない設計者は、むやみに使用するトランジスタのサイズを変えたり、補正回路を付けたりして試作を繰り返します。このような無駄な工程をなくすために、シミュレーションに対する基礎的な知識は重要です。

 回路シミュレーターに関する基礎事項、特に使用するトランジスタのモデルやパラメーターを理解し、シミュレーション結果にどのように影響するかが分かっていれば、回路の基幹要素であるトランジスタのシミュレーション精度や、収束時間を長くしている原因が検証できます。キーとなるパラメーターの修正をすることで、シミュレーション精度が上がり、試作回数が減少できます。