2015年5月14日、エムテド代表取締役、アートディレクター/デザイナーの田子學氏は京都府与謝野町にいた。同町の産業振興を推進する“クリエイティブディレクター”に就任したのだ。「与謝野町の皆さんと何度も対話し、ここだったら本物の地方創生を実現できると確信しました」。記者発表会の壇上に立った田子氏は、就任を決めた理由についてこう語った。

クリエイティブディレクターに就任した田子學氏(左)と与謝野町長の山添藤真氏
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記者発表会は、町役場や公共施設ではなく、ブランド戦略の拠点「阿蘇ベイエリア」内にある山与醤油の倉庫で開催した
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 なぜ、与謝野町は産業振興の推進役として田子氏を起用したのか。その理由は、同氏が「デザインマネジメント」によってたくさんの悩める企業を救ってきたからだ。デザインマネジメントとは、デザインを根幹に据えて企業のさまざまな問題を解決する経営手法。それを今度は“町おこし”に生かそうというのである。

 与謝野町は、2006年3月に与謝郡の加悦町、岩滝町、野田川町が合併し、誕生した。京都府北部の丹後地域に位置し、大江山連峰や野田川、天橋立を望む阿蘇海などの豊かな自然環境に囲まれている。2015年3月末時点の人口は2万3166人である。

大江山連峰(写真:与謝野町)
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野田川(写真:与謝野町)
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天橋立(写真:与謝野町)
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 基幹産業は、「丹後ちりめん」に代表される織物業と、コメを中心とする農業。どちらも非常に古くから地域に根差した伝統的な産業だ。しかし、その良さをブランドとして確立し、外部に発信するまでには至っていない。