東芝が不適切会計で揺れている。2015年3月に問題が発覚して、6月末現在、いまだにその全貌は見えてこない。全容解明は7月中旬以降になると見られている(関連記事「東芝、不適切会計で500億円強の営業益減額見込む」)。

 そんな中、6月25日に開催した定時株主総会で、東芝は不適切会計の具体的な手法を初めて明らかにした。それによれば、不適切な会計処理は複数の事業分野に及び、その内容も費用の過少計上や期末在庫の過剰評価など多岐にわたる(東芝の発表資料:PDF)。

 今回はその中で、一連の不適切会計が発覚する発端となった工事進行基準について解説する。

工事進行基準には2つの考え方がある

 土木・建築や機械装置の製造またはシステム開発など、開始から完成までに1年超を要する製造や工事の場合、完成までに長期間を要するため、いつ売上高を計上するかが問題になる。これらをまとめて「工事」ということにしよう。

 このような工事に関する売上計上基準には、従来から2つの考え方がある。

 1つは工事完成基準だ。これは「工事が完成し、その引渡しが完了した日に売上を計上する」という基準である。工事完成基準においては、引き渡しや検収という客観的事実をもって売上高と費用を計上するので、会計数値の客観性・確実性が高い。その代わり、工事が終了するまで売上高も費用も一切計上されないため、情報をタイムリーに把握することができない。

 もう1つの会計基準が工事進行基準だ。これは「工事の進捗度に応じて毎期売上高と費用を順次計上する」という基準である。工事進行基準は、売上高と費用をタイムリーに把握できる点が最大の長所だ。反面、進捗度という見積りに基づいて計上することになるので、会計数値の客観性・確実性という点では工事完成基準に劣る。

 工事完成基準と工事進行基準の優劣についての議論は、実は今に始まったことではない。両者には一長一短があり、会計理論上どちらが望ましいかという議論は古くから行われていたのである。