この数年、日本のものづくり企業は急速に構造改革を進めています。

 その効果は徐々に現れてきたと感じてはいるものの、改革の多くが民生向け、つまり一般消費者向け(BtoC)の製品やサービスから企業向け(BtoB)の製品やサービスへのシフトという印象を受けます。特にエレクトロニクス業界で、その傾向は強いようです。

 例えば、今年の年初に米国で開催された家電見本市「International CES」に関する報道でも、家電メーカーがBtoBビジネスに軸足を移す変化が見受けられます。

ネット接続で付加価値 米家電見本市開幕へ 車各社、自動運転システム 家電、照明をスマホ操作
(2015年1月6日付日本経済新聞夕刊)

米家電見本市、高まる『車』の存在感 自動運転で攻勢
(2015年1月7日付 日本経済新聞電子版)

 いずれの記事も、電装化が急ピッチで進む自動車の位置付けが、“家電”の分野で高まっているという内容です。それに合わせて、ソニーやパナソニックといった家電メーカーは、自動車部品ビジネスに傾倒し始めています。ソニーの画像センサー増産は、象徴的な例です。

「International CES」では自動車が関心を集めた。写真は、ドイツDaimler社が披露したMercedes-Benzブランドの自動運転車のコンセプトに群がる参加者
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 企業向けのクラウドサービスや「IoT(Internet of Things、モノのインターネット)」についての報道も増えています。オリンパスや富士フイルムの医療関連事業も好調です。いずれも、エレクトロニクス分野を活躍の場とする国内メーカーにとって、BtoBビジネスのプレゼンスが高くなっていることがうかがえる事例でしょう。

 もっとも、BtoCビジネスから“鞍替え”した、すべての企業がBtoBビジネスで成果を上げているわけではありません。まだまだ道半ばの企業が多いのも事実です。

 では、BtoBビジネスへのシフトは、本当に日本のものづくりの未来に向けた根本的な変革につながるのでしょうか。

 日本メーカーは、総じて旧来のビジネスモデルや考え方に立脚した構造改革が得意です。しかし、全く新しい概念やビジネスモデルを取り入れることは、残念ながらあまり得意ではありません。

 BtoBへのシフトという動きが戦略的に行われているのならいいのですが、富士フイルムのような一部の成功事例を除くと、私にはそうなっているとは思えません。