日本の製造業はその高い品質により戦後から成長を続け、その版図を世界にまで広げてきた。しかし近年、品質や技術では高いレベルを持つはずの日本企業の苦戦が続いている。製品レベルや技術では決して負けていないはず、しかし事業としては負けてしまう…。その状況に対し、いま、顧客の求める「本質的な価値」「未来の価値」を探り、事業に活かす取り組みが始められている。
 本稿では、名古屋工業大学准教授の加藤雄一郎氏が提供する「『未来の顧客価値』を起点にしたコンセプト主導型の新製品・サービス開発手法-理想追求型QCストーリー」の骨子を紹介する。(日本科学技術連盟では、同講演会の開催を予定している)

 第1回では、「バックキャスティング」という新しい思考アプローチを紹介しました。バックキャスティングの特徴は、「未来」を起点とし、未来から逆算して「現在」を考えることにあります(図1)。一方、フォアキャスティングの発想は「いま」を起点にするため、企業が保有するシーズを活かして新たな価値を生み出そうとする場合、既に顕在化している不具合あるいは想定される不具合に着目した「改善系のアイディア」に終始する傾向があります。

図1 バックキャスティングの思考アプローチ

 では、バックキャスティングの思考アプローチにすると、企業が保有するシーズの活かし方はどう変わるのでしょうか? 以下では、化粧品メーカーA社の取り組みを例にしながら、バックキャスティングの流れを紹介します。