モノからコトへ、と私は30年くらい前から言い続けている。いずれ、モノはあふれてコスト競争になり、モノの価値から使い方や使った結果のコト(事柄)の価値にシフトすると思ったのである。
しかし最近、これは10年くらい前からであるが、コンテンツという価値が、益々、顕在化すると、私は考えるようになった。
そして、その価値観は凄まじい勢いで我々のビジネス界を席捲し、モノやコトは、コンテンツの価値に従属すると言ってもよいほど、価値のヒエラルキーが入れ替わっているのではあるまいか。
そのような視点で見ると、昨今、3Dプリンターが猛烈な進化をしているが、その現状は、かつてワープロが開発されて以後、凄まじい進化をした、あの時代と同じではないかと言いたくなる。
最初のワープロは、それこそ機械式のタイプライターが電子化されただけと言ってもよいほどの性能だった。しかし、それはすぐさま変換ソフトの進化によって高性能になり、パソコン(PC)に組み込まれると、ワープロと言う製品は無くなり、後はアプリケーションソフトの勝負になり、当たり前だが、文字を書いたり図形を作る性能(コト)より、伝えたい中身・内容(コンテンツ)を制作する利便性が問われるようになったのだ。
コピー機械もそうだった。始めはモノクロだったが、それがカラーになり、カラーが良いとなると、“カラーコピー屋”と言う新しい業態が生まれたほどだった。そして、普及が進んで機械が安くると、どこの事業所でも一般家庭でも常備品になり、モノとコトの競争力はどれも同じになってしまったのである。
そして今、コピー機械はコンテンツそのものを識別する機能を備えるようになり、検索までできるようになっている。