FTAを忘れた結果、慢性トラブルで苦しむ日本企業が多いと語る國井氏。
FTAを忘れた結果、慢性トラブルで苦しむ日本企業が多いと語る國井氏。
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 慢性的に発生するトラブル(慢性トラブル)を防ぐFTA(Fault Tree Analysis:故障の木解析)への注目度が急上昇している。大規模リコールの発生を機にFMEA (Failure Mode and Effects Analysis:故障モード影響解析)を学んだ人が、FTAの重要性に気づくケースが増えているのだ。FTAは、ある1つのトラブルを対象に、その原因を深掘りしていくことで対策を講じるためのツールである。重大な事故や図面のミス、製造不具合など、慢性トラブル発生率を大幅に下げることができる。

 だが、FTAは、FMEAと同様に従来からある手法だ。なぜ、今、FTAへの注目度が増しているのか。「技術者塾」において「シンプルで強力なFMEAとDR ─導入事例とその体験実習─」と「シンプルで強力なFTA ─導慢性トラブルを撲滅する─」の講座を持つ、國井技術士設計事務所所長の國井良昌氏に聞く。(聞き手は近岡 裕)

──品質トラブルを未然に防ぐツールとして、FMEAとFTAがあると言われます。FMEAについては、既にインタビュー(「いまさらFMEAが人気のワケ」)で伺いました。では、FTAはどのようなツールなのでしょうか。

國井氏:FTAは、ある1つのトラブルを対象に、その原因を深掘りしていくことによって対策を打つためのツールです。想定されるトラブルをたくさん考えていくFMEAが「広く浅く」原因を探していくのに対し、FTAは「狭いけれども深く」原因を解明していきます。そのため、絶対に回避すべき重大な事故はもちろん、図面のミスや、製造不具合など、慢性的に発生するトラブルの発生率をぐんと下げることに役立ちます。

 FMEAでは想定トラブルをたくさん抽出しますが、それぞれのトラブルに対する原因は1次しか掘れません。

──「1次しか掘れない」というのはどういう意味ですか。

國井氏:例えば、今、蛍光灯が突然切れた。その原因は、スイッチが壊れたから。それ以上は掘れません。簡単に言えばこうです。