LEDに用いる蛍光体(以下、LED蛍光体)は、これまでほぼ20年間、LEDを赤色や黄色、そして青色や緑色、さらに白色に発光させるためのカギとなる要素であり続けてきた。蛍光体材料がなければ、LED市場は現在のようには決して成長できなかっただろうし、LEDが一般照明に用いられることもなかったはずだ。

 しかし時代は変わってきている。その主な理由は、重要な特許の有効期間が終わりを迎えつつあることだ。20年という時間は、重要な特許が切れることをも意味している。有効期間の終わりを迎えつつある特許は、日亜化学工業やドイツOsram社、そして韓国Samsung社といった、蛍光体に関する主な知的財産所有者にとってリーダーシップを維持するために極めて重要なものであり続けてきた。

 では、LED蛍光体市場では今、何が起こっているのだろうか。

量は拡大、だが金額は伸びず

 数量的には、2015年から2020年の期間に、LED蛍光体市場は2倍以上の規模に拡大することが期待されている。しかし、LED蛍光体の価格が著しく下落すると考えられるため、金額的には市場規模に変化がないと予想されている(詳細は、Yole Developpementが2015年4月に発行したレポート「Phosphor and Quantum Dots 2015 Report(蛍光体と量子ドットに関するレポート 2015年」を参照)。LED蛍光体を生産する際、最もこなれた構成要素を用いるのであれば、参入障壁となる技術レベルが低い。こうしたことから、ターンキー型の製造装置を調達し、LED蛍光体市場に参入した企業が相次いだ。新規参入企業にとって、品質管理や研究開発の費用がほとんど、もしくはまったく必要ない。このため、いくつかの新規参入企業は蛍光灯に用いられる3波長蛍光体と同じくらいの低コストでLED蛍光体の製造を実現している。市場シェアを獲得するために、新規参入企業は熾烈な価格競争を始めたのだ。

 主なLED蛍光体であるYAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット)蛍光体の特許が2017年から失効し始めるのに伴い、中国の大手LEDメーカーは、海外市場に今よりも簡単に進出できるようになるとみられる。そして、Yuji社やGrirem社、YT Shield社、Illuma社、そしてSunfor社といった企業が市場を拡大し、YAGのコモディティー化をさらに進めることになるだろう。

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