下に誤検知の例を載せました.撮影画像側で、背景と差があったところを赤く表示しています。画面右部の手の領域は物体を抽出できていますが、下部中央の本当は変化がない領域でも誤って物体を検出したことになっています。

誤検知の例
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 そのため、誤差の影響を抑える工夫をしなければなりません。

 最初に試したのは「統計的背景差分法」です。統計的背景差分法は、それぞれの画像の誤差のゆらぎが正規分布に従うと仮定し、背景画像の画素平均(μ)と画素標準偏差(σ)を基にしきい値(threshold)を下図のように設定します。

統計的背景差分法
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 この不等式の意味は、「同じ風景を撮影しているなら、撮影画像の画素は平均付近の値をとるはず。誤差により画素値が揺らいだ時を考慮し、標準偏差の定数倍のゆらぎは許容するようにすれば、画像間の誤差のゆらぎに頑健になる」という考えを表したものです。このしきい値を基に差分を判定します。

 しかし、この方法でも誤検知がまだ発生しました。どうやら、キャプチャーに用いるCMOSカメラが通常のカメラよりもかなりノイズを拾うようでした。特に暗いところや黒いものに対する撮影では、しきい値を設けても吸収できないような、「偽色ノイズ」が発生し、それを誤検知してしまうという弱点が判明しました。加えて、CMOSカメラに撮影画像の照度を自動調節する機能が付いており、それも誤検知に関与しているようでした。結局、統計的背景差分法は断念しました。