去る5月29日、米Avago Technologies社が米Broadcom社を370億米ドルで買収するというショッキングなニュースが、報道各社のヘッドラインを飾った(関連記事1)。続く6月2日には米Intel社が米Altera社を167億米ドルで買収するという、これまた派手なニュースが飛び込んできた(同2特設サイト)。ここでは、これら2つの買収劇から感じ取れることや、これからエレクトロニクス業界に起こりそうな潮流について述べたい。

売上高の10倍近くで買収という英断

 Avago社は2013年に米LSI社を買収したばかり。LSI社はストレージ向けASICを得意とし、データセンターなどのクラウドインフラ側を中心に事業を展開してきた。LSI社の買収により、Avago社はHewlett-Packard(HP)社時代から継続するアナログICや高周波ICと併せて、サーバー周辺の高速I/O需要に応えるソリューションを提供できる数少ないデバイスメーカーの1社となった。

 ASICは薄利で需要も頭打ち、コストが高いからASSPに置き換えられる、などと言われ続けてきた中、Avago社はどのようにして40%を超える粗利率を維持してきたのか。

 同社は非常に高速なSerDesのオリジナルIPを持っており、例えば台湾TSMCの最先端プロセスで比べても同社のIPが最も高速性に優れるとの定評がある。高速通信用ASSPのベンダーであるBroadcom社と経営統合することで、クラウドインフラに対するソリューション提供にも一層の幅ができるだろう。

 Avago社の年間売上高が43億米ドル規模であるのに対し、Broadcom社は同84億米ドル。そして買収金額は370億米ドルだ。自社の約2倍の売り上げを持つ企業を、売り上げの10倍に迫る金額で買収する決断はどのようにして可能だったのか。Avago社ではなくBroadcom社の社名を残すことを含め、きたるべきIoT時代に備えて積極的な決断を下したことは実に印象的だ。