静岡理工科大学大学院 理工学研究科 教授 やらまいかエデュケーションサイト長、創造工学センター長の高橋 久氏
静岡理工科大学大学院 理工学研究科 教授 やらまいかエデュケーションサイト長、創造工学センター長の高橋 久氏
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 製品の高機能化に伴い、モーターとインバーターを搭載する機会が増えている。技術も進化しており、高効率・高性能な制御技術がどんどん採用されている。こうした中、モーターとインバーターをうまく使いこなすことを求められる技術者は増える一方だ。「技術者塾」において「決定版!モーター・インバーターの基礎と制御」の講座を持つ、静岡理工科大学大学院理工学研究科教授の高橋久氏に、今、モーターとインバーターの技術を押さえる意義を聞いた。(聞き手は近岡 裕)


──モーターとインバーターの制御技術は今、なぜ求められているのでしょうか。

高橋氏:自動車や家電製品はもちろん、これから発展が期待されるサービスロボットや福祉機器にも、数多くのモーターが使われています。これらの機器の電源は、商用電源ではなくバッテリーで駆動されることが多いため、駆動時間を長くしたいというニーズがあります。そのため、モーターの駆動効率を高め、より細密な制御を行いたいという要望があるのです。

 こうした要望に応えるには、インバーターを使ってモーターに適切な電力を供給することが必要です。適切な電力は、モーターを駆動する適切なアルゴリズムを構築し、それを電子回路やマイクロコンピュータを使用して制御することで実現できます。

 インバーターは、直流から交流に電力を変換する機器であり、パワーエレクトロニクス回路となります。パワー回路の設計が正しく行われていないと、パワーデバイスの損失が増加して、駆動効率が低下します。

 また、モーターの特性を理解すれば、モーターをより効率良く駆動するアルゴリズムを設計することができます。さらに、最近の電子回路やマイクロコンピューター回路、プログラムなどを適切に設計すれば、安価で効率の高い制御システムを構築することできるのです。


──モーターとインバーターの制御は、今後ますます必要とされるようになるのでしょうか。また、その理由(背景)は何ですか。

高橋氏:まず、自動車や家電製品に搭載されるモーターの数は増加する一方です。加えて、サービスロボットやパーソナルモビリティーなどをはじめとした移動型の機器が今後急成長するとみられるのです。実際、経済産業省や新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は、サービスロボット分野の売り上げが、2015年の数千億円から7兆円程度まで増加するという予想を発表しています。

 こうした機器の多くはバッテリーで駆動されるため、決まった(同じ)容量のバッテリーを使う場合、効率が良いほど使用時間が長くて利便性が高い。使用時間が同じ場合は、効率が良いほどシステムの小型化を図れます。従って、モーター駆動回路の消費電力をいかに小さくするか、制御システム全体の効率をいかに高めるかが重要なポイントになるのです。

 これを実現するには、モーターとインバーターの特性を理解した上で、うまく活用する技術が必要となります。これからは、今以上にモーターの数が増えるのは明らか。従って、モーターを効率良く駆動できる技術者が多くの企業で求められるのではないかと思います。