日本国内だけで年間1兆kWhにのぼる熱エネルギーの大部分が廃熱として廃棄されており、廃熱の有効利用が幅広い分野で大きな課題となっています。熱電変換技術は、温度勾配を有する材料の両端や温度差のある異種材料間に起電力が生じる現象を利用して電気エネルギーを取り出す技術で、廃熱の有効利用への活用が期待されています。

 熱電変換技術については、日本が優位性を持つとみられてきました。その優位性の度合いを確認し、今後も優位性を確保していく策を考えるため、特許庁は「平成25年度特許出願技術動向調査」において、熱電変換技術に関する特許動向や市場環境、研究開発動向、政策動向を調査・分析しました(特許庁による調査レポートの概要(PDF形式)はこちら)。

 この調査では熱電発電技術を調査対象とし、原料や熱電変換素子の調製および加工が関係する「熱電変換材料」、熱電変換素子と絶縁板および電極をユニット化した「熱電変換モジュール」、熱電変換モジュールと熱源などの熱交換を組み合わせた「熱電変換システム」を調査しました(図1)。本稿では、調査結果の主要部分と日本が目指すべき方向性を紹介します。

図1 技術俯瞰図
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