近年、再生可能エネルギーの導入・普及が進められており、再生可能エネルギー発電設備の増大に伴って、余剰電力が増大することが見込まれています。このような余剰電力の有効利用のためには、蓄電池あるいは水素などへの変換によるエネルギー貯蔵技術が不可欠であり、今後の研究開発の活発化が見込まれています。

 こうした背景のもと、特許庁は「平成25年度特許出願技術動向調査」において、水素の製造や貯蔵などに関する特許動向を調査しました。この調査では、水電解による水素製造、液化システム、貯蔵システムを対象として、電解式水素製造およびその周辺技術について、特許情報から技術全体を俯瞰するとともに、市場環境ならびに政策状況、技術競争力などの状況との関連を分析しました(図1、特許庁による調査レポートの概要(PDF形式)はこちら)。本稿では、調査結果の主要部分を紹介します。

図1 技術俯瞰図
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水素・燃料電池の導入シナリオ、2030年以降に高まる需要

 エネルギー利用用途の水電解式水素製造装置の市場はまだ存在しません。2015年に燃料電池自動車の販売が開始され、販売量の増加に伴い、2030年以降、現在の水素製造能力を上回る需要が生じるとみられています(図2)。その時点で、海外の再生可能エネルギー発電適地で発電された電力から水電解により製造された水素が輸送される必要性が生じるとみられています。

図2 燃料電池自動車と水素ステーションの普及に向けたシナリオ
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