富士ゼロックスは、2010年から若手育成活動としてETロボコンに参加している。有志者の募集を毎年行い、これまでのところ毎年2チームずつ(2010年のみ3チーム)出場した。その結果、これまで延べ11チームが参加し、実際に参加したメンバーも50名程度となった。社内でも若手のソフトウエアエンジニア育成活動として認められるようになった。ETロボコンの結果としては、2012年にモデル部門で「全国大会エクセレントモデル賞」を受賞、2014年のチャンピオンシップ大会ではデベロッパー部門のアドバンストクラスでモデル審査の最高賞である「ベスト・オブ・アドバンストクラス」を獲得、そしてアーキテクト部門では念願の優勝と、成果を上げることができた(図1)(各部門の概要は前回のコラム記事「日本企業の開発力向上へ、ETロボコンの挑戦」)。ここでは、我々が企業としてETロボコンに出場する意義と、その効果について紹介する。

図1 アーキテクト部門で優勝した「mirai craftチーム」
図1 アーキテクト部門で優勝した「mirai craftチーム」

巨大化する組込みソフトウエア

 我々はオフィスで使われる複合機の「コントローラー」と呼ばれるユニットのソフトウエアを開発している。複合機コントローラーとは、コピーや、プリント、スキャナーやファックスなど、画像データを利用して各種のサービスを提供する複合機の心臓部である。複合機は、ここ十数年のユーザーニーズやオフィス環境の変化に合わせて進化してきた。例えばネットワーク化への対応、それに伴うセキュリティー機能、サーバーなどとの外部機器連携などである。そして、その進化に合わせてソフトウエアの規模も大幅に増えている。2000年ごろのプログラムの大きさはコード行数にして200万行程度であったものが、2010年ごろには1000万行を超えており、今もその規模は増えている(図2)。

図2 複合機コントローラソフトウェアの規模の推移
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 このような規模の増加に加え、ソフトウエアに要求される信頼性のレベルも上がっている。また、市場にいち早くサービスや商品を提供するため、2000年当時に比べると商品開発サイクルも早まっている。グローバルな展開のためにはコストを下げる必要があり、少ない人数、少ない投資で効率良く製品を作らなくてはならない。