日立製作所、三菱電機など一時は巨額な赤字を出した日本の電機メーカーはテレビ、パソコン、半導体、携帯電話機、液晶パネルなどの不採算事業を切り離し、電力や社会インフラ事業などに事業の軸足を移すことで収益上は復活を遂げました。

 一方、パナソニックに買収されて消滅した三洋電機やシャープ、ソニーのようにいまだに苦境から抜け出すことができない企業もあります。シャープの液晶パネル、ソニーの携帯電話機、パソコンのように、日本の電機メーカーの中では相対的に事業が強かったために、不採算事業から抜け出すことに遅れた、逃げ遅れたのが苦境の原因かもしれません。

 1980年代後半から1990年代にかけて、日本の電機メーカーは世界の市場を制したと言っても過言ではないでしょう。バブル崩壊で金融業界の護送船団方式が崩れたとしても、技術力の高い日本メーカーは潰れるはずがない、と思っていた人も多いと思います。それが、最近ではリストラで最も多くの人員削減が行われる業界になってしまいました。

 私自身は東芝に在職していましたが、フラッシュメモリという大成功した製品を担当し、事業も会社の状態も絶好調の時に大学に転職しました。幸運にも電機業界のリストラや事業撤退といった経験をしていません。ただ、同世代で同じ業界の中で苦しむ知り合いは多数おり、他人事ではありません。

 会社が経営難になり、事業が切り出されたり、「追い出し部屋」に送り込まれて自主的に退職することを勧告されたり。また、会社が潰れていなくても将来の技術開発に投資できない状態ですから、会社に残った人も苦しい戦いが続いていることでしょう。

 多くの日本企業では経営状態が極めて悪くなるまで、潰れる寸前までは極力、人も事業にも手をつけないことが多いでしょう。つまり、投資を控え、リストラする場合も少しずつ、最小限にする。これは人に優しい経営とも言えます。