高周波回路を搭載する機器は増加の一途をたどっている。民生機器や産業機器を問わず、機器や回路の技術者が高周波回路の設計に関わる機会は今後増えていくとみられる。技術者の中には、高周波回路設計に初めて携わるケースや、社会人になってから本格的に高周波回路設計に従事することになるケースもあるだろう。そこで今回、日経BP社が開催する技術者塾において、初めて高周波回路設計を学びたい方、あるいはもう一度学び直しをしたい方を対象にした、高周波回路設計の基礎を学べるセミナー「高周波伝送回路とスミスチャート・Sパラメータの実践活用」を企画した(2015年7月10日開催、詳細はこちら)。
 高周波回路を設計する術を身に付けるには、電磁気現象の物理的イメージと導出された数式の物理的な意味を理解することが重要になる。今回のセミナーでは「大学学部2年生レベルの学力で高周波伝送回路の本質をマスターする」ことを目標に掲げ、スミスチャートを活用した高周波整合回路設計の基礎を学べるようにした。本セミナーの講師を務める呉工業高等専門学校 副校長/教授の黒木太司氏にセミナー受講の効果などを聞いた。(聞き手は日経BP社 電子・機械局 教育事業部)

呉工業高等専門学校 副校長/教授 黒木太司氏

――高周波整合回路設計を習得しておくと、どのような利点がありますか。高周波整合回路設計の基礎を習得する効果をご紹介ください。

黒木氏 高周波整合回路設計は、VHF帯以上の電波領域におけるアクティブ回路やパッシブ回路の高性能化設計に有効となります。具体的には、アンテナ、発振器、低雑音増幅器、電力増幅器、周波数変換器、変調器、結合器、分配・合成回路などの高性能化に寄与します。

――高周波整合回路設計は、今後ますます必要とされるようになるのでしょうか。

黒木氏 現在300MHzから数GHzにわたるUHF周波数帯の利用は逼迫しており、各種無線システムを最適に運用するためには、RF回路の高性能化は最重要事項になります。またベースバンド信号で利用されるデジタル信号の伝送速度はますます高速化する趨勢にあり、このような信号の高効率伝送にも高周波整合回路設計は必要になります。

――高周波整合回路設計の基礎を習得する上でのキーポイントを教えてください。

黒木氏 回路内における電磁波の挙動が目に見えるがごとく把握できることがキーポイントになります。そのためには、交流回路理論と電磁界理論の理解が重要です。

――本セミナーにおいて、どのようなポイントに力点を置いて説明されるご予定ですか? そして、どのような方々の参加に期待されますか?

黒木氏 上述のように、回路内における電磁波の物理現象の解説に力点を置きます(下図はセミナーで解説する内容の一部)。これから高周波回路設計者を目指す方、電磁波回路の本質を理解したい方、伝送回路や電磁気学を学び直したい方などの参加を期待しています。

セミナーで解説する内容の一部
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セミナーで解説する内容の一部
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――本セミナーを受講することで、受講者はどのようなスキルを身に付けることができるのか、ご紹介ください。

黒木氏 基本的な高周波回路設計、スミスチャートを駆使した回路設計、S行列を用いた回路設計評価、整合理論を用いた各種伝送線路、回路・アンテナ設計、非接触電力伝送システムの高効率化などのスキルを身に付けることが可能です。