電磁気学の教科書には、電磁気学の基礎となる方程式として、マクスウェルの方程式が出てくる。前回に続いて、日経BP社の技術者塾で「アンテナ設計の基礎」を教える根日屋英之氏(アンプレット 代表取締役社長)に、マクスウェルの方程式を理解するためのポイントを聞いた。

――電磁気学の教科書には、基礎となる方程式として、マクスウェルの方程式が出てきます。しかし、ローテーション、ダイバージェンス、偏微分などを扱った式はとっつきにくい声をよく聞きます。

 それは、数学で考えようとするからです。式で見ると難しく感じるのですが、マクスウェルの方程式は、実は簡単です。下の4つの式を順番に説明します(図1)。

図1
図1 マクスウェルの方程式
式で見ると難しく感じるが、実は簡単だ。例えば上から1番目の式は、高校で習うアンペールの法則(右ねじの法則)に行き着く。

 まず、1番目の式です。これは、電線に電流が流れたときに磁界が発生する誘導磁界を表したものです。この式の意味を追求すると、高校で習うアンペールの法則(右ねじの法則)に行き着きます。アンペールの法則とは、電線に電流Iが流れたとき、電線から距離rだけ離れた場所に、同心円状に磁界H=2πrIが発生するというものです。右手の親指を立てて手を握ると、親指の向きを電流の方向としたとき、残りの指の向きが磁界の向きと一致することから、右ねじの法則や右手の法則と呼ばれます。1番目の式は、要はこれの説明です。

 この式の左側は、誘導磁界をベクトルHのローテーションとして表しています。ローテーションとは、物理的にはくるくるとループ状に回っているという意味です。磁界は、くるくる回って発生するということです。式の右側の第1項は、このとき電線に流れた電流です(図2(a))。電線に流れる電流を導電流と呼び、電流の向きがあるので、これをベクトルJで表しています。

図2 誘導磁界とマクスウェルの方程式
電線に流れる電流の周囲に、それを取り巻くように磁界が発生する。この電流に、導電流と変位電流の概念を加えたのがマクスウェルの研究と考えてよい。
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