――1番目の式の右側には、第2項があります。これは何でしょうか。

 交流では、電線に流れる導電流とは別に、電線のない空間にも電流が流れます。これが第2項です。

 電線を切断し、そこに金属板を付けたらどうなるかを考えてみましょう。それはコンデンサーという部品で、このような電線のない空間にも交流であれば電流が流れます。この電流を、電線に流れる導電流と区別して変位電流と呼びます。

 電線に電流が流れたときに発生するのと同じ磁界を電線のない空間に掛けると、電線に流れる導電流と同じ値の変位電流が発生します。この変位電流は、導線に交流が流れる場合しか発生しません。電線が切れている部分はコンデンサーと考えられます。直流の場合はコンデンサーに電流は流れませんが、交流ではコンデンサーにも電流は流れます。変位電流の発生も、これと同じです(図2(b))。

 式の右側の第2項が偏微分方程式の時間微分(∂/∂t)になっているのは、時間とともに変化している、すなわち交流の世界という意味です。電磁気学では∂/∂tという記号がよく出てきますが、これらを無線の世界では「交流のときに起こる」というマークだと理解すると、分かりやすいと思います。