Apple社が日本に技術開発拠点を置くことになったことを深く考えて、現在そして将来の日本の電子産業の価値を再認識することを目的とする今回のSCR大喜利。2人目の回答者は、某半導体メーカーの清水洋治氏である。



清水洋治(しみず ひろはる)

某半導体メーカー
 某半導体メーカーで、(1)半導体の開発設計、(2)マーケット調査と市場理解、(3)機器の分解や半導体チップ調査、(4)人材育成、という四つの業務に従事中。この間、10年間の米国駐在や他社との協業を経験してきた。日経BP半導体リサーチにて、半導体産業に関わるさまざまなトピックスを取り上げつつ、日本の半導体産業が向かうべき方向性を提起する連載コラム「清水洋治の半導体産業俯瞰」を連載中。

【質問1】日本に研究所を置くことで、Apple社はどのようなメリットを得ると思われますか?
【回答】 ポスト・スマホ クルマ・・・家電・・・

【質問2】Apple社の研究所設置で生まれる機会を、日本のどのような業種の企業がどのように活用すべきと思われますか?
【回答】応用技術と割り切る必要がある

【質問3】今回のApple社の動きは、海外の他の電子産業の企業にも波及する可能性のある動きなのでしょうか?
【回答】トライアングルを形成すれば・・・

【質問1の回答】ポスト・スマホ クルマ・・・家電・・・

 Apple社の製品ポートフォリオは偏っている。「iPhone」「iPad」「Mac」などのコンシューマ製品ばかりだからだ。上手くいっている今のうちに、次の成長製品を本気で探し、構築しようとしているのだと思う。具体的にはクルマ、家電(ホーム)、クラウドなど。

 日本にはクルマや家電に関して世界的なメーカーもあればエンジニアも豊富にいる。これらを有機的に結び付けることで、新たな価値創生を進めようとしているのではないか。この数年間に、日本メーカーは大きな構造改革を行い、優秀なエンジニアを社外に放出せざるを得なかった。これらのエンジニアをApple社は受け入れている。

 Apple社の製品群を過去にさかのぼって見ると、いつでもそのマーケットに日本メーカーの製品がいた。Macに対抗したのは、多くの日本のパソコンメーカーであったし、iPodのライバルは当初、ソニーの「ウォークマン」を筆頭に、多くの日本製ポータブル・プレーヤーであった。iPhoneの原型になったPDA(Personal Digital Assistant)、PND(Personal Navigation Device)ではソニー、カシオ計算機、シャープなど多くの日本メーカーが市場や技術を牽引した。

 日本に開発拠点を持つことで日本メーカーの動向を、今後ともに常時ウォッチし、より昇華、洗練した製品に結び付ける狙いもあるかもしれない。日本には強い素材メーカーもそろっている。いち早く新たな素材や技術をキャッチし、それらを製品に活用するために地の利を得ることで大きなメリットが得られると考えている。