新市場の創出や成長が見込まれる分野で、強い半導体メーカーがかかわるM&Aが目立ってきた。

 2015年1月には、Infineon Technologies社がInternational Rectifier社の買収を完了した。パワー半導体の分野でのシェアが第2位三菱電機の約2.5倍となる巨大企業の誕生だ。自動車や産業の分野で強いInfineon社、ICTや民生機器で強いIR社と、得意市場も相補的な組み合わせであると言われている。加えて、Si系、SiC系、GaN系とパワー半導体を実現する技術の引き出しも多様化した。

 一方、3月には、NXP Semiconductors社がFreescale Semiconductor社を合併することで合意した。成立すれば、自動車用半導体製品と汎用マイクロコントローラー(MCU)の分野で、世界トップの企業が生まれる。セキュリティー向けチップで急伸しているNXP社が、MCUと無線通信の技術を大幅に強化した先には、新市場であるIoTの攻略を念頭に置いた意図も見え隠れする。

 極めつけが、同じく3月に米国のメディアが報じた、Intel社がAltera社の買収を目指して交渉中という報道。買収価格で折り合わず、既に交渉が決裂したという続報も出ているが、データセンター向けチップの市場やファウンドリー事業の安定化など、その動機を探るさまざまな憶測が飛び交った。次世代の成長市場の獲得に悩む巨人と、将来が楽しみな応用市場を多く保有する企業の組み合わせは、新しい潮流を感じさせるものだ。

 さらに、この原稿を執筆している時点で、Avago Technologies社がBroadcom社を、何と370億米ドルで買収するというビッグニュースが飛び込んできた(参照リリース)。何かに突き動かされるように次々とM&Aに走る半導体業界のビッグネームたち。一体、今、半導体業界に何が起こっているのか。

 今回の大喜利では、こうした強い半導体メーカーによる大型M&Aの背景には、現在の半導体業界に流れるどのような潮流があるのかを探った。各回答者に投げかけた質問は以下の通り。

【質問1】
元々強い半導体メーカーが、なぜ今M&Aに走っているのでしょうか?

【質問2】
現在の一連のM&Aの類似例を過去の半導体業界で探すと、どのような事例が挙がりますか?

【質問3】
強いメーカーが進める規模の拡大や機能の強化は、半導体業界の構造や勢力図にどのような影響を与えると思われますか?

 回答者は以下の通りである。

三ツ谷翔太氏
アーサー・D・リトル
「ソリューションの提案こそがリーディング企業の役割」参照

南川 明氏
IHSテクノロジー
「新規市場での事業拡大に向けて顧客と技術を獲得」参照

和田木哲哉氏
野村證券
「注目は自動車分野での価値の再配分」参照

いち半導体部品ユーザー氏
某ICT関連企業
「統合しないとできない新規市場の創出を期待」参照

清水洋治氏
某半導体メーカー
「ポストスマホ向け市場創出に向けた新たな業界再編」参照

表1●回答のまとめ
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