今年は日本でブレーク

 2015年に入って、日本にも3Dプリンターによる製品製造の波が本格的に押し寄せてきたようです。例えば、GEオイル&ガスの刈羽事業所(新潟県・刈羽村)は金属3Dプリンターを導入し、エネルギー産業用プラントで使われる特殊な仕様のコントロールバルブ部品の製造を2015年3月末に開始しました(関連記事)。リコーも、自社工場において治具や型などの生産ツールの製造装置として3Dプリンターを応用しており、製品に組み込む部品などを直接製造することも検討しているそうです(関連記事)。

 大企業だけでなく、中小企業や個人での取り組みも増えています。しかも、産業用の高価格な3Dプリンターではなく、10万円前後で購入できるような低価格3Dプリンターで最終製品を造ろうという取り組みです。

 例えば、YOKOITO(本社神奈川県茅ケ崎市)は2015年5月14日、一眼レフカメラなどに取り付けられるトイカメラレンズ「FAB-LENS」を発売しました。FAB-LENSは、マウントや絞り、レンズ部、フードなどをユニット化して組み合わせられるようにした製品。ほとんどの部品を、樹脂溶解積層法の低価格3Dプリンターによる造形を前提として設計してあります。

 同社はFAB-LENSの各部品の3Dデータを公開しており、ユーザーが自宅の3Dプリンターを使って造形することも可能です。色や材質の異なる樹脂を選んだり、形状を部分的に変更したりすることもできるわけです。もちろん、基本的には同社が造形した製品を販売することで収益を上げるのですが、オープンソース化することでメーカーだけでは実現できない発展も期待できます。

 MORITA(本社仙台市)が開発・製造・販売するトランペット練習用ミュート「Mutio(ミューティオ)」も、製造手段として低価格3Dプリンターを活用した製品です。消音性の高さはもちろん、楽器装着時の抵抗感の軽さや低音域の安定性といった点も高く評価され、2015年4月からは全国の楽器店での販売が開始されました。

 実はMutioは販売が開始された当初は、3Dプリンターで製造したことをWebサイトなどでアピールしていました。ところが今は、カタログなどにも「3Dプリンター」の文字は掲載されていません。このことを聞くと、MORITA代表取締役の森田大氏からは「もう、3Dプリンターで造っているということを、あえて言わなくてもいいと思っています」という答えが返ってきました。Mutioの付加価値は3Dプリンターで造ったことではなく、その結果として実現できた使い勝手や軽さにあるからです。