CTCの入っている工場団地のビル
CTCの入り口

 米国のプリント基板業界、実装業界は、2001年のITバブル崩壊のあおりを受けて、大手メーカーの国内量産工場がほとんど閉鎖されるまでに追い込まれました。しかし、全ての米国内のメーカーがなくなったわけではありません。

 中小のメーカーはかなりしぶとく生き残って事業を続けており、逆に拡大しているメーカーさえあります。そのような中で、ユニークな事業を展開しているCircuit Technology Center社(以下、CTC)の活動を紹介したいと思います。

 CTCは、筆者のオフィスがあるMassachusetts州Haverhill市の工業団地の中にある、従業員100人ほどの会社です。社名からはちょっと想像しがたいかもしれませんが、CTCの主要業務は、プリント基板および実装基板の修理なのです。一部小規模の組み立てを行っているようですが、主要な事業とはなっていません。

 基板の修理といえば、日本では暗いイメージで、基板メーカーや実装メーカーが、必要悪的にサービスしている感じがしますが。CTCでは独立した事業として手掛けているのです。

 プリント基板に部品が実装されれば、その価値は一桁大きくなり、それが不良となれば損失も大きなものになります。実装工程で発生した不良を補うために、プリント基板と部品を新たに調達して実装するとなると、費用も時間もかかります。

 CTCの責任者の説明によれば、不良となった実装基板の大部分は単純な不良要因で、わずかな手間で修理が可能なのだそうです。メーカーにしてみれば、多少の手間をかけても、新規に作るのに比べて、はるかに小さなコストと短い時間で基板が復活することになります。

 主に民生用途の量産品を扱う日本の品質管理の観点では、このような修理に頼る品質管理は邪道に見えるかもしれません。しかしながら、量が少ない産業用や航空宇宙用のエレクトロニクスが主体の米国、特にニューイングランドでは状況は違ってきます。

 回路が複雑で、多品種少量生産が多い工程では、不良要因が多岐にわたり、一つの不良について原因を明らかにし、改善措置を講じても、かけた手間の割には、工程の歩留りは向上しないという現実があります。いきおい、メーカーとしては、現実的な修理という手法に走ることも理解できないことはありません。

 しかし、多様な基板の不良に対応して、解析と修理を行うには、それなりの経験と技能が必要になります。そのための要員を抱えることができないメーカーとしては、CTCのような専門家に委託することになります。ニューイングランドには、このようなエレクトロニクス企業が数多くあるので、CTCのようなビジネスが成立するわけです。