「企業は競争があるから成長する」と、人は言う。しかし、では、成長したくて競争し続けている企業があるのだろうか。自らが競争を仕掛け、競争こそが成長するための唯一の手段と考えている企業が、本当にあるのだろうか。
 あるいは、自らは望まない競争を仕掛けられ、売られたケンカは買うしかないと応じて成長した企業はあるのだろうが、競争が楽しくて仕方ないと言う企業があるならば、それは、かなり好戦的な企業ということだ。

 申し上げたいのは、競争しないと、本当に企業は成長しないのだろうか。例えば、競争相手もなく、最初からほとんど一人勝ち状態という企業があったとして、競争がないのだから、その企業は成長しないということなのか。

 しかしよく見ると、独占的な優位性を持った企業は案外と多く、競争することなくマイペースなのに意外と強い、そんな企業が存在するのである。

 どうも私たちは、競争するのが当たり前、あるいは、そうしなければ負けてしまうし成長なんて覚束無い(おぼつかない)、と考えているフシがある。

 一旦、ビジネスのフィールドに出たならば、とにかく競争して一番を目指さなければ企業ではないと、妙な危機感と言うのか使命感と言うのか、常に何かと戦うのがビジネスなのだと思い込んではいないだろうか。

 まるで、独裁者に洗脳されたように、あるいは、何かにとりつかれたように、がむしゃらに一番を目指して突っ走るのだが、果たして、その結果は良いことなのだろうか。