「日経エレクトロニクス」の記事を肴に産業界や社会の将来像を語り合う対談の第4回。今回は同誌5月号の特集記事「大学発世界企業」を中心に、いいクライアント、いいパートナーとしての大企業の存在、そして自前の技術に溺れない開発者の姿勢の重要性を説く。
(前回から読む)
今井 大学発の企業をはじめ、ベンチャービジネスが日本で育っていくためにはどうすればいいのでしょうか。
川口 どうしても国産でというニュアンスだったら、要素技術が搭載される製品やシステムが、たまたま日本が世界的に強いとなると分かりやすいですよね。
今井 例えば、自動車関連の技術を開発するベンチャーだったら、大手自動車メーカーが受け皿になる。
川口 ただ、その場合は、国内の自動車メーカー側に受け皿になる気があるかという問題がありますね。アウトソースを嫌う文化があるから。
山本 自前主義ですからね。
川口 「なぜ、日本製でなければならないか」という議論は置いておいて、要素技術を搭載する製品やシステムが世界的に強いことが日本で自己完結させる必要条件ですよね。ただ、世界的に強いということは、今のやり方でいいと思っているということでもある。そこにいる人は、やり方を変える必然を感じていないわけです。その典型は自動車産業で、まだ敗戦を経験していない。だから、必要十分になりにくんだよ。
今井 そうすると、ベンチャー企業としては要素技術だけでなく、それを使った応用製品まで考えて、頑張ってお客さんを捕まえてくる必要があるということですね。
川口 ただ、販路やメンテナンス、アフターケアをどうするかという問題が出てきて、商品は出したけれども頓挫するケースも多い。そこはボトルネックになるので、自分の勢力圏内でメンテナンスできるだけのエコシステムを持っていないと。
山本 その通りですね。
今井 その部分は、大企業とつながっていくという話になるんですか。