川口 家庭での発電は、レーザープリンターやコピー機に似ているんです。コピー機は、すごく長いこと売っているけれど、メンテナンスが必ず発生するでしょう? 紙が詰まったり、故障したりするからですよ。これは、BtoB(企業向けサービス)ならば成り立つ。多くのメンテナンス担当者を用意しても、ペイする規模感だから。
でも、家庭向けではインクジェットプリンターに勝てない。メンテナンス係を派遣するのではなく、壊れたら機器を丸ごと取り替えるという発想の方が効率がいいからですよね。これを太陽光発電や蓄電池でやったときにエネルギーの観点で採算が合うのでしょうか。新品と交換するわけですから。「壊れたから、また新しいのが売れてよかったね」というのは、産業振興的にはいいのかもしれないけれど、話がおかしい。大きなビルや工場の規模感じゃないと採算が合わないでしょう。
今井 そういうある程度の規模感で水素に変換するのも、やはり割に合わないのでしょうか。
山本 いまのところ、変換効率は悪いですよ。もちろん、有望な技術分野であることには変わりないので、需要がどーんと出ればコストダウンできると考えているのかもしれません。今回の特集(「出番だ! 蓄エネ」)で書いていたように、いろいろな手段はあります。それでも、現段階では割に合わないでしょうね。技術的なブレークスルーが必要です。
川口 例えば、離島のようなクローズドな系であれば、シクロヘキサンを使う循環システムのようなものが成り立つかもしれません。閉じた系に特化した仕組みだから。でも、水素には、危うさを感じざるを得ない。
山本 水素については、なかなか将来像が浮かびにくい印象がありますね。「水素自動車は普及するか」という議論でも、水素スタンドを世の中にばらまくことは結局のところ変換効率が悪く、化石燃料以上に環境負荷が高くなるという意見もあります。コストダウンに資する部分は、基本的に貯蔵施設はでっかいトランクですからスケーラブルなはずだ、という話がメインのようです。