川口 フライホイールも、蓄熱も技術は昔からあって、知の蓄積がある中で粛々と研究開発が進んでいたんだよ。

山本 「蓄電池か、別のエネルギーか」という二つの軸で蓄エネ技術の開発が進んでいる中で、水素という全く違うベクトルの話が出てきました。

川口 そういう意味では、これは国家戦略なんでしょう?

山本 そう言いたいところなんですけど、詳しく話を聞くとそうでもないように思うんです。いま、私どもの会社ではスマートグリッド技術関連の仕事をいくつかやっていて、その際たるものは統計分野での需要予測とかなんですが、その関係で関連省庁の担当者に「水素って、国策なんですか」と聞いたら「いや、そんなつもりはないんです」と(笑)。

川口 得意の責任者不在の行動なんでしょうかね。大きな場面で「水素」の話は、ずいぶんと出てくるようになりました。

山本 実際、現場で聞く話は、特に「水素だから」という話ではなくて、「経済合理性があれば、民間企業で検討して採用していただだければいい」という感じです。でも、そんなことをやりそうな企業は限られています。資本が必要だし、システム全体をハンドリングするにはどうしても規模がないといけません。「水素スタンドのようなものをたくさん助成金を出してつくっていく方針なんですか」と聞いても、そういう手形は切ったつもりはないようです。誰がやろうとしているのか、いまいちよく分からないという印象ですね。

山本 一郎(やまもと・いちろう)
1973年東京生まれ。1996年慶應義塾大学法学部政治学科卒業。国際電気(現・日立国際電気)入社後、調査会社、外資系証券会社調査委託などを経て、2000年、IT技術関連のコンサルティングや知的財産権管理、コンテンツの企画・制作を行うイレギュラーズアンドパートナーズ株式会社を設立。ベンチャービジネスの設立や技術系企業の財務・資金調達など技術動向と金融市場、各種統計処理や分析業務に精通。また、対日投資向けコンサルティング、投資ファンドを設立。著書に『ネットビジネスの終わり (Voice select)』(PHP研究所)、『投資情報のカラクリ』(ソフトバンククリエイティブ)など多数。日本随一の時事・経済系ブロガーとしても知られ、産経デジタル『iRONNA』、ヤフーニュース『無縫地帯』、扶桑社『ハーバービジネスオンライン』など多くのウェブ媒体に時事解説を寄稿しており、有料メルマガ『人間迷路』を発行。2013年都市型高齢化検証プロジェクト『首都圏2030』を立ち上げ、現在東京大学客員研究員も務める。三児の父。(写真:加藤 康)
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今井 では、国としてどれかに決めたわけではないということなんですか。

川口 そういえば、先日も東芝のニュースが出ていたよね。コンテナのやつ。

山本 出てましたね。

今井 それは、どういう?