山本 現状では、よほどうまくやらないとコストが合わないんじゃないかと思うんですよね。
川口 合わないよね。
山本 水素に限らず、例えば、太陽光発電を何らかの形で蓄電して電力系統に負担を掛けないような形で売電するという手法も、この図にあるダックカーブをくらうケースがある。そうなってくると、実は「再生可能エネルギー、いらねえじゃん」という話になってしまいます。それ自体は夢のある話なんだけど、実現するために得られるエネルギー以上のコストがかかるわけで。
そうすると脱原発と脱化石燃料の両方をやっていって、あるいは安全な電力で、かつCO2を削減するという環境負荷の小さな発電技術を考えたときに、いろいろなものが吹っ飛んでしまう。
再生可能エネルギーでやるとしても、それでカバーできる範囲はものすごく限られていて、出力が不安定である以上、それを補正する技術として蓄電の話が出てきます。その蓄電自体はそのままでは環境負荷が高いという“いたちごっこ”が発生するわけです。
それを水素貯蔵で統合しようという話を自動車会社などが言い始めています。でも「良さそうだからとりあえずやってみよう」というのは、この件に関しては乱暴だと思うんです。水素スタンドはそれほど簡単にできるものではないし、電力系統に負担を掛けないことが金科玉条になるのであれば、その蓄電にかかるコストの捻出も考えなければならないですよね。
今井 そうですね。
川口 NaS電池や、レドックスフロー電池のような蓄エネ技術の話は以前からあったけれども、ここにきて水素が最有力候補として急浮上してきた。
山本 彗星のように出てきたんですよね。