日経BP社が企画したアナログ設計連続講座について紹介する本連載2回目は、最初の講座である「CMOSアナログ回路入門」について、監修者である群馬大学 教授の小林春夫氏に企画の意図や効果を聞いた。同氏によれば、アナログ回路を理解するには、教科書を読むだけでは不十分という。アナログ回路設計でスキルアップを図るには、ベテランの技術者や研究者に直接聞くことが欠かせないとする。果たして、その理由とは何か。(聞き手は日経BP社 電子・機械局 教育事業部)

――「CMOSアナログ回路入門~基本からOPアンプの動作までを理解する~」を企画された意図は?

小林氏 トランジスタレベルの設計、例えば小信号解析など、教科書を読んでもすべてを理解するのは困難です。これは、自分自身の経験でもあります。私はかつて米University of California,Los Angeles校(UCLA)に留学中、教授であるAsad Abidi氏を訪ねた際に言われたことをよく覚えています。それは、「回路の講義を聞いただけで、学生はなかなか付いてこられない。理解するためには、分かる人に直接聞くのだ」ということです。教科書を読んだだけでは分からないだろうから、先輩の学生とか、大学院生とか、教員、研究者など実際に分かっている人にじっくりと聞くのが一番効果があるというのです。

 トランジスタレベルの回路設計を手掛けている研究室の卒業生であれば、基本増幅回路など回路の基本的なところはしっかりと分かっているはずです。しかし、大学でそうした経験を積めなかった技術者は、教科書だけを読んでも限界があるというのが正直なところでしょう。本当に理解するのは、まずはよく分かっている人に講義を受け、さらに聞くだけでなく質問をしたりするなど直接話を聞かねばなりません。「CMOSアナログ回路入門~基本からOPアンプの動作までを理解する~」は、こうした機会の提供が狙いです。そこをクリアすれば、あとは教科書を読んだり論文を調べたりするなど、自分自身で理解を深めていけます。

――人に直接聞くことが鍵ですね。

小林氏 そうです。最近はインターネットやメールなどを使って調べたり聞いたりするなど便利になっていますが、専門家に直接会うことが昔も今も重要です。もちろん、インターネットやメールなどは仕事の高効率化に大きく貢献していますが、フェース・ツー・フェースが重要なことに変わりはありません。