ルネサス エレクトロニクスが突然発表したトップの交代によって、同社が今後どのような方向に向かうのか切り口の抽出を目的とした大喜利。ファクトを発掘するのではなく、ルネサスの今後の経営を考える上での視点を、各回答者の経験や価値観から挙げることに注力している。今回の回答者は、微細加工研究所の湯之上隆氏である。

湯之上 隆(ゆのがみ たかし)
微細加工研究所 所長
湯之上隆(ゆのがみ たかし) 日立製作所やエルピーダメモリなどで半導体技術者を16年経験した後、同志社大学で半導体産業の社会科学研究に取り組む。現在は微細加工研究所の所長としてコンサルタント、講演、雑誌・新聞への寄稿を続ける。著書に『日本半導体敗戦』(光文社)、『電機・半導体大崩壊の教訓』(日本文芸社)、『日本型モノづくりの敗北-零戦・半導体・テレビ-』(文書新書)。趣味はSCUBA Diving(インストラクター)とヨガ。

【質問1】今回のトップ交代のタイミングは、適切だと思われますか?
【回答】思わない。責任放棄だ

【質問2】退任する作田氏の功績として何が挙げられますか?
【回答】功績があったというには早すぎる

【質問3】遠藤氏の経歴を鑑みて、どのような経営をしていくことに期待しますか?
【回答】トヨタ自動車やデンソーに株主を辞めてもらう

【質問1の回答】思わない。責任放棄だ

 2013年6月に会長兼CEOに就任した作田久男氏は、同年10月に、2017年3月期に営業利益率10%以上を目指す「変革プラン」を発表した。その際、作田氏は「まだ人・モノが多い。大げさに言うと、(ルネサス テクノロジとNECエレクトロニクスの)トータルの売上高が1兆8000億円だったころと比べて、今の売上高レベルで考えれば3分の1くらいまでに減らさなければならない」と発言し、多くの工場の縮小、売却、閉鎖などを大胆に進めた。

 また、管理職(課長級以上)の約5割を、組合員(主任・係長級以下)に降格。2013年9月末退職者の割増退職金を最大12か月(2011年3月退職が最大40か月、2012年10月退職は最大36か月だった)に引き下げ、2013年度は夏冬ともボーナスゼロの見通しを示し、その上で希望退職を募るという極めて苛烈な方法で人員削減を行ってきた。その結果、最大4万8000人だった社員数は2万7000人に減少した。それでも、作田氏は「まだ人員の余剰感は25%くらいある」と述べ、2017年3月期末までに国内8工場の閉鎖や大幅縮小を打ち出していた。

 筆者は作田氏の強引な経営手法に賛同できないが、2017年3月期に営業利益率10%以上を目指すと「変革プラン」で決めたのならば、最後までやり通すべきである。途中で交代するのは責任放棄である。