ルネサス エレクトロニクスが突然発表したトップの交代によって、同社が今後どのような方向に向かうのか切り口の抽出を目的とした大喜利。ファクトを発掘するのではなく、ルネサスの今後の経営を考える上での視点を、各回答者の経験や価値観から挙げることに注力している。今回の回答者は、IHSテクノロジーの大山聡氏である。

大山 聡(おおやま さとる)
IHSテクノロジー 主席アナリスト

1985年東京エレクトロン入社。1996年から2004年までABNアムロ証券、リーマンブラザーズ証券などで産業エレクトロニクス分野のアナリストを務めた後、富士通に転職、半導体部門の経営戦略に従事。2010年より現職で、二次電池をはじめとしたエレクトロニクス分野全般の調査・分析を担当。

【質問1】今回のトップ交代のタイミングは、適切だと思われますか?
【回答】外部からは適切かどうか見えにくい部分が多く、判断できない

【質問2】退任する作田氏の功績として何が挙げられますか?
【回答】2015年3月期に黒字決算を出したこと

【質問3】遠藤氏の経歴を鑑みて、どのような経営をしていくことに期待しますか?
【回答】ソフトウェア側から見たソリューション提案ができるデバイスメーカーを目指すこと

【質問1の回答】外部からは適切かどうか見えにくい部分が多く、判断できない

 作田久男会長兼CEOの就任期間は2年間、構造改革の途上にある企業の舵取りを担う期間としては、決して長いとは言えない。ルネサス エレクトロニクスという企業が現時点で抱えている課題を考えると、構造改革には長い時間が必要と思われ、2年での退任はむしろ短いのではないか、という印象もある。

 しかし作田氏が会長兼CEOに就任した時、同社の改革を完了することが同氏のミッションだったとは考えにくい。一定期間(例えば2年間とか)、ある一定基準をクリアする(例えば最終黒字を計上するとか)といったマイルストーンを設定した上での就任だったとすれば、今回のトップ交代は既定路線だったと見ることができる。言い換えれば、「理想論を言えばキリがないが、現実的な選択肢の中では妥当な判断」ということになるだろう。

 キリがないと言いながら理想論の1つとして、マイコン以外の製品力強化が挙げられる。同社が得意とするマイコンは、自動車向けや産業機器向けに今後も需要拡大が期待されるが、これらのアプリケーションはマイコンと同時にアナログICやパワーデバイスを組み合せたソリューションを求めるケースが多い。競合であるInfineon Technologies社は、マイコンだけでなくアナログICやパワーデバイスの品ぞろえが豊富であり、NXP Semiconductors社もFreescale Semiconductor社を買収したことによって、これらの品揃えが強力になった。ルネサスとしても、何とかしてアナログとパワーデバイスの強化を進めたいところである。