新市場の創出や今後の成長が見込まれる分野で目立ち始めた、強い半導体メーカーがかかわるM&Aの深層を探るSCR大喜利。今回の回答者は、某半導体メーカーの清水洋治氏である。
清水洋治(しみず ひろはる)
某半導体メーカー
【質問1の回答】ポストスマホ・マーケットでの地位確保
過去5年、半導体のみならずIT関連ビジネスや技術を進化させてきた牽引者はスマートフォンであった。CPU性能の向上、グラフィック能力の強化、通信速度アップなど明確な進化の指標があり、各メーカーは自社の強みを発揮することで市場を拡大してきた。
しかし結果としてスマホ向け半導体市場は、半導体メーカーは2強(Qualcomm社、MediaTek社)体制、加えて中国メーカー(HiSilicon社やSpreadtrum社、RDA社)の台頭という構図で落ち着いた。多くのメーカーはこのカテゴリーからの撤退を余儀なくされている。2強になんとか食らいついているのは、Intel社だけという状況である。そのIntel社は中国メーカーとの協業を進めており、これもM&Aに近い業界再編の現れである。
一方でNXP Semiconductors社によるFreescale Semiconductor社の統合のような大型M&Aは、スマホ市場での失地回復のための、次の巨大市場を見据えた業界再編の動きと捉えている。2社ともに2000年代後半までは紛れもなく携帯用チップのメーカーであり、市場変化に合わせて携帯向けチップ事業から早々に撤退を行った。
ポストスマホもスマホと同じく、チップセット、キット、プラットフォーム、業界標準がキーワードになっていく。IoTにせよ、コネクテッドカーにせよ、自動運転にせよ、1チップでは完結しない。自社の強みを補強・補完するアイテムを持つ会社同士が共同戦線を張り、ポストスマホの地位確保、市場支配力強化を目的としたものだと考える。