新市場の創出や今後の成長が見込まれる分野で目立ち始めた、強い半導体メーカーがかかわるM&Aの深層を探るSCR大喜利。今回の回答者は、某ICT関連企業のいち半導体部品ユーザー氏である。
某ICT関連企業
【質問1の回答】強い半導体メーカーのサービス拡大か、それとも先が読めないだけか
半導体メーカーのM&Aは、いろいろな目的で実施されている。元々強い半導体メーカーのM&Aも同様であり、技術力の強化、市場またはシェアの拡大、製品ラインアップの拡大、コスト低減などが目的となる。したがって、ここで要約してしまうのは無理があるかもしれないが、あえて俯瞰して見ると、強い半導体メーカーの売上増が目的であろう。
ただし、強い半導体メーカーの製品であっても、結局はシステムメーカーが採用しなければ売上増は達成できない。このため、半導体メーカー、システムメーカーの両方にメリットが無ければならないはずである。例えば、半導体自体が高機能化、高精度化になるとシステムメーカーも使いこなしが困難になってくる。こうした課題を解決するために、高機能半導体メーカーが周辺部品や技術を持つメーカーをM&Aすることで部品1つでは無く回路としてソリューション提案を図る場合がある。これはシステムメーカーに取ってもメリットが大きい。強い半導体メーカーもこのようなソリューション提案、製品ラインアップ充実で、より価値の高いサービスをシステムメーカーに提供しなければならなくなっているのかもしれない。
だからといって、ソリューション提案に欠かせない要素を自前で新規開発しようとすると、膨大な時間とコストを費やさなければならない。既に技術を持った半導体メーカーを取り込んだ方が早く製品化、市場投入できる。当然、自前の開発リスクや知財リスクを低減することもできる。
ただし、M&Aによって投入できるようになる新製品、参入できるようになる新市場が、これまでに無い全くの新製品、新市場なのかという点に注目したい。これが達成できることが理想であり、本来目的とすべきことかもしれない。現状のM&Aの結果は、まだそこに行きついていないようであり、既に存在する製品、市場への参入に留まっているように思える。半導体ユーザーの立場からは、これまでに無い新製品や新市場の創出につながるM&Aに期待したいと思う。