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 米Apple社は、カメラ技術を保有するイスラエルLinX社を買収した。この買収劇について、「More than Moore」の市場調査・戦略コンサルティングを手掛けるYole Developpement(以下、Yole)が最近リリースしたレポート「Status of the CMOS Image Sensor Industry(CMOSイメージセンサー業界の状況)」の2015年版でまとめた。本稿は、その一部を紹介する。

 今回の買収劇が証明したことは、限られたスペースにおける高画質実現というジレンマを解決する手段として、複数のカメラを利用するアプローチへの注目度が高まっているということだ。既に知られているように、Apple社は技術と市場の点で「トレンドを生み出す会社」である。そのことから考えると、今回のLinX社買収は驚くようなことではないかもしれない。

 Apple社は実際、カメラの画質の高さをスマートフォンの販売増に生かした最初の会社だ。2010年に発売したiPhone 4の場合、採用したカメラ機能の土台となったのはBSI(裏面照射型)と呼ばれる技術であり、デジタルカメラに匹敵する画素数と画質を手に入れた。それ以降、BSI技術はさらに進化した。ソニーによる積層BSIが生まれ、iPhone 5とiPhone 6に採用された。

 この事実から明らかなように、カメラモジュールの実装面積と高さを抑えて小型化しつつ画質を高めることは、Apple社のイメージングに関する技術ロードマップを常にけん引している。複数のカメラを利用するアプローチは、Apple社が想定する次の技術を可能にするかもしれない。