電気自動車(EV)メーカーの米Tesla Motors社が、2015年第1四半期(1~3月期)のEVの世界出荷台数が対前年同期比55%増の1万30台に達し、四半期として過去最高を記録したと2015年4月、発表しました。同月1日からは、ドイツの自動車大手BMW社が、EV「i3」の新車をアマゾンジャパンのサイトで販売し始めています。このEVをめぐっては、2015年2月に、米Apple社が自社ブランドのEVを開発し始めたとの報道が世界を駆け巡っています。

 このように、ここにきてEV関連の動きがにわかに活発化しています。こうした機をとらえ、日経ものづくりでは2015年5月号でEVの特集をお届けすることにしました。手始めに、2015年4月初頭に製造業関係者を対象として、「EV市場の期待と実力」についてアンケート調査を実施しました(回答数344)。例えば、「エコカーのうち、現時点と10年後(2025年)の時点のそれぞれにおいて、最も重視すべきだと思う市場はどれか」と聞いたところ、現時点では「高効率エンジン車」という回答が25.6%と最も多く、これに「ハイブリッド車(HEV)」(23.0%)と「プラグインハイブリッド車(PHEV)」(22.7%)という回答が続きました。これらの回答はEV(20.1%)を上回っています。一方、10年後は「EV」との回答が34.6%と頭一つ抜けて多くなり、続いて「燃料電池車(FCV)」という回答が24.7%と続いています。

 このアンケート調査からは、将来的には、最も多くの回答者がEVを最も重視すべきと指摘していることが分かったわけです。冒頭に紹介したTesla社やBMW社、Apple社の動きはこうした方向を先取りしているとも考えられます。これに対して、日本の自動車メーカーといえば、もちろん将来を見据えた動きとしてトヨタ自動車のFCV「MIRAI」など活発な動きはあるものの、ことEVに関しては海外勢に比べて動きがややおとなしいところが多い状況です。

 このような問題意識から、今回のEV特集のタイトルは「気がつけば世界はEV」としました。本特集では、Tesla社、米General Motors社、米Ford社、BMW社、ドイツVolkswagen社といった国外メーカーへの海外現地取材に加えて、日産自動車、三菱自動車、ホンダ、トヨタ自動車などの、EVを中心とした次世代戦略を徹底取材してお届けします。本特集を担当したのは、Tesla社など海外勢を含むEVの動きを追いかけてきた山崎良兵デスクと、自動車をはじめとする技術面での造詣が特に深い近岡裕デスクのコンビです。

 今回のEV特集においては、こうした各社のEV戦略とともに、是非ともお読みいただきたい記事があります。本誌が独自予測した「トヨタが頑張ればこんなEVができる」です。トヨタ自動車は、EVに比べて相対的に技術ハードルが高いFCV「MIRAI」を2014年末から一般消費者向けに発売しています。このトヨタが本気を出してEVの開発に取り組んだ場合、どのようなすごいEVができるのか、大胆予測しました。

 2015年5月号でもう1つご紹介したいのが、特集2「ポリプロピレンをくっつける」です。自動車、電気製品をはじめ、さまざまな機器に広く使われるポリプロピレン(PP)は、接着が難しい材料の代表格です。そのため、これまでは、熱や超音波で溶着したり、プライマーやコロナ放電といった前処理の上で接着剤を使ったりという手間をかけるか、ねじなどで機械的に止めるのが常識でした。そこに、接着剤メーカーが前処理なしで使える接着剤を次々と投入し始めています。これまでの苦労から解き放たれる糸口が見えてきました。担当したのは、2014年8月号の特集「何でもくっつける」を前述の近岡デスクとともに執筆し、多くの読者の方にご好評をいただいた木崎健太郎編集委員です。「くっつける」といえば木崎編集委員ということで、今回の特集2もご期待ください。