今、世界では次世代の製造業を巡る覇権争いが起きているといっても過言ではない。IoT(Internet of Things、モノのインターネット)や3Dプリンティングなどを新機軸に製造業再興を目指す米国。「Industry 4.0」(インダストリー4.0)で工場のスマート化や国際標準策定を主導しようとするドイツ。高い経済成長率を背景に「世界の工場」として力を付けてきた中国。ITを武器に製造業でも存在感を高めたいインド。日本の製造業を取り巻く環境は、さらに厳しくなるだろう。そんな中、日本でも今後の針路を模索する動きが始まりつつある。その1つが、内閣府の推進する「革新的設計生産技術」だ。

「第9回 日独産業フォーラム」で講演する佐々木直哉氏
内閣府政策統括官(科学技術・イノベーション担当)付戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)革新的設計生産技術担当プログラムディレクター(PD)を務めている。日立製作所研究開発グループ技師長でもある。
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 安倍晋三内閣が目玉政策として掲げた「アベノミクス」。その第3の矢である「民間投資を喚起する成長戦略」(日本再興戦略)を実現するには、民間企業の活力が欠かせない――。こうした問題意識に沿って内閣府は「戦略的イノベーション創造プログラム」(SIP)を設置し、取り組むべき「課題」として革新的設計生産技術を含む10項目を選定した。各課題に専任のプログラムディレクター(PD)を置くなど、万全の体制を敷いている。

 革新的設計生産技術のPDとして白羽の矢が立ったのは、日立製作所研究開発グループ技師長の佐々木直哉氏である。その佐々木氏は2015年4月中旬、ドイツ・ハノーバーの地にいた。産業技術の展示会「Hannover Messe 2015」の会場内で開催された「第9回 日独産業フォーラム」に登壇するためだ。同フォーラムの主題はズバリ、インダストリー4.0。そのインダストリー4.0に比肩する日本の取り組みとして、佐々木氏は革新的設計生産技術について語った。