日々の仕事で論文を読んだり、実験や解析を進める中で、数学の知識不足を痛感した経験を持つ技術者は多いのではないだろうか。一方、学生時代に数学を学んだものの、目的が明確でないために学習に身が入らず、中途半端な学習に終わってしまったと感じている技術者も少なくないだろう。
 技術者が現場で求められる「数学」の知識を身につけられる講座を、日経BP社は技術者塾の数学コースとして開催する。講師は、東芝で20年近くにわたり半導体の実務を経験し、現在は中央大学 理工学部で教鞭を執る杉本泰博氏である。同氏に、講座の狙いや効果を聞いた。(聞き手は日経BP社 電子・機械局 教育事業部)

講師を務める、杉本技術士事務所 所長/中央大学理工学部 教授の杉本泰博氏
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――数学講座を企画した意図は。

 私自身が、企業の技術者として論文を読んだり、解析の業務を進める中で、数学が分からずに困った経験をしてきました。「数学を知っていれば、もっと仕事ができるのに」と、何度も思ったものです。

 私が当時担当していた業務では、アナログ回路の解析で幾つかの数学が必要でした。数学を使いこなせないと、良い設計ができなかったのです。数学の必要性をすごく実感しました。

 こうした経験から、技術者の皆さん、特に回路設計者の皆さんに、実務に役立つ数学を知ってほしいと思い、今回の講座を企画しました。

――数学の学習と一口に言っても、さまざまなレベルがあります。技術者の実務に役立つ数学とは。

 学習レベルは、それほど高くなくて構いません。大学院で学ぶレベルで十分です。そのレベルの数学が身についていなかったり、忘れてしまったりしていて、実務で苦労することが多いのです。逆に、大学院レベルの数学が身についていると、回路の解析などでとても役立ちます。