本間技術士事務所の本間精一氏
本間技術士事務所の本間精一氏
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──強度トラブル以外に目立つトラブルは?

本間氏:寸法に関するトラブルですね。これはどちらかといえば、市場に出す前のトラブルであることが多い。組み立てようと思ったけれども、うまく寸法が合わなかったといったトラブルです。


──寸法トラブルは、なぜ起きるのですか?

本間氏:これは、製品設計と成形条件でもって起こるトラブルです。ということは、プラスチックの設計や成形について分かっていなければ対処しようがありません。金属の場合は、工作機械の精度でほぼ一義的に出来上がる製品の寸法が決まります。もちろん、熟練工を要する精密研削などもありますが、寸法の精度は一般的に工作機械の精度で決まると言ってよいでしょう。ところが、プラスチック成形の場合には、金型も、成形条件も、製品形状も寸法に影響します。つまり、金属とは違って、単純に工作機械の精度だけでは決まらないことが多いのです。


──要は、良い寸法のプラスチック製品を造るための“変数”が多いのですね。

本間氏:ええ。理論的に決められる要素よりも、経験に基づいてものづくりをする部分が、まだプラスチックの場合には多いということなのです。イメージするなら、“実数解”と“虚数解”があるような感じでしょうか。虚数解のところに経験的な要素が入ってくるような感じがあります。技術である以上、「正解」は存在するわけです。全くあり得ないことではないのだけれど、それを見つける手立てがないですよ、という言い方の方がよいかもしれません。


──そう考えると、トラブルのないプラスチック設計・成形というのは難しいのですね。

本間氏:どんなに難しくても、正解のない問題はありません。必ず正解はあるのですが、それを見つけるために、分かりやすくまとまった資料はほとんどなく、いろいろなことを教えてくれる人が減っている。そのため、正解を見つけるのに時間がかかるということが、現在の問題なのです。